V候補・昌平がなぜ完敗? 青森山田は「走力がものすごい」「強かった」…監督、選手が感じたリアルな差【高校選手権】

青森山田に4失点完敗の昌平【写真:徳原隆元】
青森山田に4失点完敗の昌平【写真:徳原隆元】

準々決勝で青森山田に0-4敗戦、初の4強入りを逃す

 第102回全国高校サッカー選手権は1月4日、埼玉と千葉で準々決勝4試合が行われ、ベスト4が決まった。浦和駒場スタジアムでの第1試合は、2年ぶり4度目の優勝を狙う青森山田(青森)と初の高校日本一を目指す昌平(埼玉)の優勝候補同士が顔を合わせ、青森山田が4-0で快勝し、2大会ぶり9度目の4強に進出した。6日の準決勝で市立船橋(千葉)と対戦する。

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昌平の歴代チームは攻撃陣にスポットライトが当たってきたが、その洗練された崩しの形を支えてきたのが、地味ながら忠実で粘り強い堅ろうだ。ところが準々決勝ではその堅守が早々にほころび、あまりにも早い2失点を食らった。

 前半2分に右コーナーキックをきっかけに先手を取られると、2分後にも左フリーキックから連続失点した。2点ともサイドバックとセンターバックに蹴り込まれたものだ。

 村松明人監督は「うちが先行するイメージでいたので、(あの2失点は)相手に守りと攻めの余裕を与えてしまった」と悔やんだ。

 2失点とも守備ラインが崩壊したものではなかったが、前半19分の3点目は完全にやられた。FW米谷壮史の軽やかなドリブルを遮断できずに左サイドを崩され、意表を突かれたニアへの最終パスをMF芝田玲にダイレクトで叩き込まれた。

 まさに上手の手から水が漏れた格好だが、守備のリズムの悪さが攻撃にも伝播したのか、いつもの昌平らしいリズミカルで美しい攻撃が見られなかった。

 3回戦の1トップから1、2回戦で採用した小田晄平と鄭志錫で編成する2トップに戻した。村松監督は「鄭は(敵の)センターバックへの圧力の掛け方がうまくて速いので2トップにした。相手も(前線から)圧力を掛けてくるし、ボールが飛び交う試合になることも予想しました」と説明する。

 指揮官の言葉どおり、前半は電光石火の2ゴールで余裕を持った守備体制の青森山田にほとんど何もさせてもらえなかった。シュートは2本だけ。可能性があった一打は、前半18分に鄭の絶品スルーパスに抜け出した小田が放った1本しかない。

 3点を追い掛ける前半23分から、変幻自在のドリブラーMF西嶋大翔を皮切りに、3回戦まで毎回得点しているMF長璃喜、MF山口豪太、FW工藤聖太郎を送り込んだ。「仕掛けられる選手をどんどん入れて流れを変えたかった」と指揮官は言う。

 後半はボールを握る回数が圧倒的に増え、MF大谷湊斗や西嶋の仕掛けなどでチャンスを作りかけたものの、相手の守備網を崩壊させてのシュートは、残念ながら1本も打てなかった。

「悔しかった」…アームバンドを巻いたセンターバックが悔恨

 長璃は「足元でパスを受けられなかった。自分は張って仕掛けるのが得意なんですが、今日は中に入って崩すことを意識した。でも相手の対人と空中戦、走力がものすごくて思ったようにプレーできなかった」と青森山田との差をこう話した。

 ベンチの村松監督も同じ感想だ。「相手は(サイドで持たれても)中だけやられなければいいという試合運びだった。攻守とも1対1と空中戦が強かった」。今季のプレミアリーグ・ファイナル王者を倒せなかった背景を、こんなところにも感じていたようだ。

 今季のプレミアリーグEASTでは、夏の第10節が1-5で完敗し、秋の第21節は2-2で引き分け、このチームでは白星を挙げられなかった。

 選手は3度目の挑戦で初の4強を目指すとともに、第98回大会準々決勝でも青森山田に敗れた先輩の雪辱も誓っていたが、どちらも叶わなかった。

 主将のDF石川穂高が昨年7月末に左膝に重傷を負い、予選も本大会も出られなかった。代わってアームバンドを巻いたセンターバックの佐怒賀大門は、「4失点だし、試合終了の笛が鳴った時は情けなく、悔しかった」と残念がり、「さっき穂高が『怪我をして迷惑ばかり掛けてきた』と言った時には、より勝ちたい気持ちになった」と言葉をつないだ。

 昌平には初の、埼玉県勢としては第71回大会の武南以来のベスト4はならなかった。しかし中学生年代の下部組織、FC LAVIDAとの6年指導体制が成功している限り、昌平の準決勝進出も初優勝も、そう遠い夢物語ではないはずだ。

(河野 正 / Tadashi Kawano)



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河野 正

1960年生まれ、埼玉県出身。埼玉新聞運動部で日本リーグの三菱時代から浦和レッズを担当。2007年にフリーランスとなり、主に埼玉県内のサッカーを中心に取材。主な著書に『浦和レッズ赤き激闘の記憶』(河出書房新社)『山田暢久火の玉ボーイ』(ベースボール・マガジン社)『浦和レッズ不滅の名語録』(朝日新聞出版)などがある。

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