久保建英は今や「真のリーダー」 現地記者が嘆くアジア杯出場による不在の影響「彼のような選手はいない」【現地発】
ソシエダの久保がラ・リーガ19節アラベス戦で先発出場、好機に絡むも1-1ドロー
2024年最初の公式戦となったアラベス戦で久保建英はラ・リーガ6試合連続の先発出場を果たすも、思うような結果を得ることができなかった。
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昨年の公式戦最後の3試合をスコアレスドローで終え、ラ・リーガで6位につけるレアル・ソシエダは年明け早々の2日、第19節のバスクダービーでアラベスをホームに迎えた。負傷欠場が続いていたアンドレ・バレネチェアが1か月ぶりに復帰し、怪我人はアリッツ・エルストンドのみ。戦力が十分整った状態でアラベス戦に臨んだ。
同じバスク州を拠点とするアラベスは今節開始前、ラ・リーガ3連敗、4戦勝利なしの16位という厳しい状況に置かれていた。久保にとってはマジョルカ時代の恩師ルイス・ガルシア・プラサが率いるチームだ。また、ジョン・グリディ、アンデル・ゲバラ、アンドニ・ゴロサベル、アレックス・ソラ、シェベル・アルカイン、ジョン・カリカブルといった、ソシエダのカンテラ出身の選手たちが多数所属しており、互いをよく知るチーム同士の対戦となった。
昨年最後のカディス戦で殴られた肋骨の具合が懸念された久保だったが、大事には至らず、6日間のクリスマス休暇を経て、再び4-3-3右ウイングで先発出場した。
いつもどおり序盤から厳しいマークに遭い、前半は簡単にボールが入らない状況が続く。そのためコーナーキックやクロスで味方の頭を狙うも上手く合わず、前半32分に1人かわしてペナルティーエリア内から左足で放ったシュートはDFに阻止された。
後半に入り徐々に存在感を増していったが、それと同時にファウルを受ける機会も増えていく。そんななかでも後半9分にマルティン・スビメンディのシュートシーンを演出し、同38分には右サイドで巧みなドリブル突破からブライス・メンデスの決定機を作り出したが、どちらのシュートも得点にはつながらなかった。
さらに後半アディショナルタイム、ペナルティーエリア手前から左足で強烈なシュートを打ったが、惜しくもクロスバー上部を直撃。その1分後にザハリャンとの交代でピッチを去った。
ソシエダはこの日、ペナルティーエリアより前にポジションを取っていたアレックス・レミーロが相手GKのロングキックに上手く対処できずハンドで退場し、前半のうちに厳しい状況に追い込まれた。そして後半に入り、ミケル・メリーノのファウルによるPKで先制点を許し、敗戦濃厚となるなか、終了間際にスビメンディがチームにとって公式戦4試合ぶりのゴールを決めて1-1で引き分け、最悪の事態を回避した。
スペインの地元紙は久保離脱の影響度を指摘「酷いものになる」「黄金のような価値」
ソシエダはラ・リーガ前半戦を8勝8分3敗の勝ち点32、6位という成績で終了。2季連続のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得が難しい状況になっている。
アラベス戦で大腿部を痛めた久保は試合後、最近ずっと相手からファウルの標的となっていることに関して、「僕はみんなに楽しんでもらえるよう、ボールを持って、試合に勝てるようにプレーすることを心がけているが、ここ数試合は難しくなっている。大いに傷つけられているので、審判やライバルからもっと守られる必要がある」と心情を吐露した。
またもや勝ち点3を獲得できなかったことが大きく影響し、この日の久保に対するクラブ地元紙の評価はあまり高くなかった。
「ノティシアス・デ・ギプスコア」紙は、アジアカップで抜ける久保の影響度の大きさにも触れつつ、「今日最大の懸念事項は、今後1か月間ラ・レアルが彼なしで過ごすことがどれだけ酷いものになるかを改めて露呈したことだ。前半は控えめだったが、後半はチームを背負い、唯一ドリブルを仕掛け、相手のラインを破壊した。疲れ知らずで、まるでハンマーのようだった。0-1で迎えたアディショナルタイムにシュートをクロスバーに当てたのは残念だった。決定的な役割を果たした」と評し、6点(最高10点)をつけた。
「エル・ディアリオ・バスコ」紙も、久保のパフォーマンスを上々と見ている一方、アジアカップにより最大1か月にも及ぶチーム離脱を懸念する。「シーズン開幕時のような相手を置き去りにする輝きは依然としてないものの、相手と対峙するためにボールを求める姿勢は、このような試合では黄金のような価値がある。右サイドでは興味深い仕掛けで主役を演じ、チームが同点にする前にはシュートをクロスバーに当てた。今月は彼の不在を痛感することになるだろう」と寸評し3点(最高5点)と評価した。一方、全国紙「マルカ」紙、「AS」紙はともに2点(最高3点)と高かった。
スペイン人記者も久保の離脱に嘆き「1か月間も抜けてしまうのは…」
スペインの国営ラジオ局「RNE(ラジオ・ナシオナル・エスパーニャ)」でアラベス戦の実況も務めたフアン・カルロス・センドヤ・アルバレス氏に、この日の久保の印象を話してもらった。
「特に後半、アラベスのディフェンスを大いに苦しめていたし、彼のプレーがラ・レアルをゲームに引き込んだと思う。彼の奮闘により数的不利の状況が目立たなくなっていた、というのが本当のところだ。チームの背中を最も押していたし、真のリーダーだった」
さらに久保がアジアカップのメンバーに選ばれたことにも触れ、「久保はラ・レアルにおいて文句なしのレギュラーだ。チームには良い選手が揃っているが、彼のように試合の均衡を破るような貢献ができる選手は、ほかにいないと思う。もしかしたらバレネチェアがその役割を果たせるかもしれないが……。久保はラ・レアルにとって必要不可欠な選手であり、アジアカップで(最長)1か月間も抜けてしまうのは非常に大きな損失だ」とソシエダの戦力ダウンが必至であることを示唆していた。
久保本人も中途半端な時期にチームを離れることに関して、「ラ・レアルが給料を払ってくれているので、アジアカップがラ・リーガ期間中に開催されるのは残念」と不満を口にしていたが、「母国を代表してプレーするのはとても素晴らしいことだ」と、日本代表の活動に前向きな姿勢も見せていた。
日本代表が2月10日のアジアカップ決勝に進出した場合、久保は最大でソシエダで公式戦9試合の欠場を余儀なくされる。さらにその直後の14日、今季最大のビッグマッチになり得るパリ・サンジェルマンとのCLラウンド16初戦を控えている。
高橋智行
たかはし・ともゆき/茨城県出身。大学卒業後、映像関連の仕事を経て2006年にスペインへ渡り、サッカーに関する記事執筆や翻訳、スポーツ紙通信員など、スペインリーグを中心としたメディアの仕事に携わっている。