盟友・河合竜二が語る、小野伸二「現役ラストゲーム」の舞台裏 「昨年から引退をちらつかせる発言をしていた」【インタビュー】
浦和と札幌で共闘した河合竜二氏、引退決意後は「本当にサッカーを楽しんでいた」
2023年12月3日のJ1最終節・北海道コンサドーレ札幌対浦和レッズ戦、MF小野伸二は26年間の現役ラストゲームを札幌で迎えた。高校卒業後に浦和レッズに加入し、18歳でプロ生活をスタートさせた小野のラストゲームを、札幌のフロントという立場から見守っていた河合竜二氏(コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン)。浦和時代のチームメイトであり、札幌でも共闘した河合氏にラストゲームにまつわる話を訊いた。
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◇ ◇ ◇
──引退することは、いつどういうタイミングで聞かれたのですか?
「実は本人の口から聞く前に、小野伸二の本を出すということで僕にもインタビューが来て、『今回小野さんが引退を決めたということで』と冒頭でインタビュアーが話し始めた時に知りました。8月初めでした。そのあとすぐのホームゲームの前に伸二が寄ってきて、『すみません、言うの遅れました』と切り出して、『引退することを決めました。長くお世話になりました』と本人から聞きました」
──その後、ゆっくりお話される機会はありましたか?
「伸二の誕生日に話したんですけど、もう決断してすっきりした印象でしたね。昨年から引退をちらつかせる発言をしていて、去年はそのまま現役を続行したので、そういう気持ちになったんだなと見てましたけど、今年はもうやり切ったというか、すっきりしてましたね」
──怪我の悩みを聞かれていたのですか?
「足が痛いとか、調子が悪いというのはよく漏らしていましたし、相当痛いんだろうなと傍らで見ていました」
──残りのシーズンをどう過ごしたいか、何か聞いておられましたか?
「12月までにコンディションを上げていくことを考えていましたね。引退を決めてからは、本当にサッカーを楽しんでいた印象が強いです。引退するとなってから、練習場には毎日カメラが来ていましたし、ファン・サポーターもいるなかで楽しんでいる姿が増えていました」
──どう送り出してあげたいというお気持ちでしたか?
「“伸二のために”というのをクラブも選手たちもみんなが思っていました。引退すると聞いてからは『残りわずか、伸二らしく楽しんでね』と言って、最終戦に向けてコンディションを作っていってくれよという思いでいっぱいでしたね」
「ミシャさんと伸二は特別な関係。やっぱりミシャさんにとって信頼できる選手の1人」
──選手としてスタメンで出ることの意味をどう思われますか?
「現代サッカーではベンチメンバーを含めた戦い方というのが問われるので、スタメンじゃなくても役割は変わらないと思うんですけど、選手である以上、スタートの11名に選ばれるということは非常に光栄ですし、そこを目指してやらない選手はいないので、やっぱりスタメンって聞くと嬉しいですよね。引退する選手は残り数分の出場でボールを触れるか触れないかみたいな印象しかなかったので、それがスタメンとは凄いなって」
──スタメンで出すことを決めたミシャ監督との関係は傍から見ていてどうですか?
「ミシャさんと伸二は特別な関係だと感じています。事あるごとによく座りながら2人で喋っている姿、通訳を交えた3人の姿っていうのは結構見ていたので、やっぱりミシャさんにとって信頼できる選手の1人だと思います」
──プレッシャーとはまた違うと思いますが、ラストゲームに向けて心の動きを感じておられましたか?
「プレッシャーはたぶん感じたことがないんじゃないかな、今まで。そんな話をしたことはないですけどね。ただ、徐々にコンディションが上がってきて、しっかり作ってきたなと感じていました」
──ラストゲームに向けて最後に練習を見られたのはいつですか?
「試合前日の札幌ドームでの練習です。僕を見つけて、ボールを僕のほうに蹴って遊んでくれた。じゃれてくる変わらない姿が伸二らしいなと思いました」
──試合直前はどんなやり取りをされましたか?
「ウォーミングアップ前に選手を送り出すルーティンがあるんですけど、その時に『楽しんで』と声をかけたら、伸二はいつもどおり、笑顔でしたね」
──22分間のプレーに込められたものはどう見えましたか?
「小野伸二らしさは全開だったと思います。これが小野伸二だというプレーも見せてくれて、まだいけるんじゃないの、というふうにも思わせてくれましたね。田中駿汰に出した緩やかなパスは伸二らしかった。ああいう発想で、ボールタッチの強弱でスペースへボールを出すことはなかなかできることではないので、あれは小野伸二だというプレーでした」
現役ラストマッチで小野が先発「『もう交代かよ』って大きい声で叫んじゃいました」
──22分の時間の印象は?
「1人で『もう交代かよ』って大きい声で叫んじゃいましたね。もうちょっと見てたかったなというのが本音です」
──試合後はどんな話をされたのですか?
「その日のプレーに関しては何も喋っていないです。その試合、勝ちたかっただろうし、チーム優先というのが伸二の中にあると思うし、悔しかっただろうなって。伸二が一番勝ちたかったと思います」
──引退セレモニーのミシャ監督と浦和レッズのサポーター、そして伸二さんのやりとりは、かつて浦和におられた河合さんはどう思われましたか?
「ミシャさんも伸二も浦和をすごく愛してる。もちろん僕も所属させてもらってクラブにいる時は、熱狂的な応援で後押ししてくれていましたし、セレモニーでのやりとりは、非常に見ていて面白かった。伸二が『リスペクトの気持ちを忘れないでください』と言ったのは、あの場面だけじゃなくいろんな意味合いがあったと思いますね」
──サポーターの横断幕は印象的でしたね。
「浦和レッズサポーターが、クラブを去った選手に対してああいう横断幕を出すというのは僕は見たことがなかったので、歴史を作ったなと思いました」
ラストマッチの相手は古巣・浦和「“サッカーの縁”というのがあるのかもと話した」
──キャプテンマークを巻く姿はどのように見られましたか?
「浦和時代も他でもキャプテンマークを巻いてプレーする姿も見ていましたが、久々にキャプテンマークを巻いた姿を見られてやっぱり嬉しかったです。正直、感傷的になりましたね」
──河合さんの引退試合のときも相手が浦和で多くのサポーターが詰めかけた中での最後でしたが、そういう巡り合わせについてふたりでお話されたことはありましたか?
「『こんな巡り合わせないな』って、『“サッカーの縁”というのが本当にあるのかもな』って話した記憶はあります。プロキャリアをスタートさせたチームを自分の現役ラストゲームの相手として迎える――。そんなシチュエーションで引退する選手ってなかなかいないですよね」
──札幌のファン・サポーターとのつながりはどうでしたか?
「浦和時代から何も変わらず、伸二はどこに行っても、誰に会っても謙虚な姿勢とリスペクトの気持ちを常に持ち合わせていました。僕のほうが1つ年上ですけど、常にリスペクトを持った立ち居振る舞いは尊敬します」
[プロフィール]
河合竜二(かわい・りゅうじ)/1978年7月14日生まれ、東京都出身。西武台高―浦和―横浜FM―札幌。J1通算191試合9得点、J2通算147試合2得点。18年シーズン後に引退し、19年2月より札幌のフロントスタッフに就任。コンサドーレ・リレーションズチーム・キャプテン(CRC)としてクラブを支え、一般社団法人コンサドーレ北海道スポーツクラブスポーツダイレクターとしても精力的に活動している。
(mm)