“パリ五輪世代”日本代表「人材プール」 CFはエース細谷真大が主軸…福田師王、ロス世代・後藤啓介ら逸材揃い【コラム】

中盤、攻撃での活躍が期待される選手たちをピックアップ【写真:Getty Images & 徳原隆元】
中盤、攻撃での活躍が期待される選手たちをピックアップ【写真:Getty Images & 徳原隆元】

パリ五輪出場を目指す大岩ジャパンの人材プール中盤、サイド、CF編

 来夏に開催されるパリ五輪に向けて、来年4月には最終予選を兼ねたU-23アジアカップが行われる。「FOOTBALL ZONE」では「パリ五輪世代FILE」と題して特集を展開し、現時点での人材プールをまとめる。後編では中盤、サイド、センターフォワード(CF)の人材を紹介。なお、大岩剛監督が就任してから2年間で招集した選手をメイン候補でリストアップしたが、未招集で食い込んでくる可能性のある選手も特別枠で名前を挙げている。

<中盤>
◎川﨑颯太(京都サンガF.C.)
◎山本理仁(シント=トロイデン)
◎藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)
◎鈴木唯人(ブレンビー)
◎松木玖生(FC東京)
〇福井太智(バイエルン・ミュンヘン)
〇田中 聡(湘南ベルマーレ)
荒木遼太郎(鹿島アントラーズ→FC東京)※期限付き移籍
平岡大陽(湘南ベルマーレ)
谷内田哲平(京都サンガF.C.)
柴山昌也(セレッソ大阪)
松岡大起(ノヴォリゾンチーノ)
日野翔太(拓殖大)※サガン鳥栖内定<2025年加入>
重見柾斗(福岡大)※アビスパ福岡加入内定
山内 翔(筑波大)※ヴィッセル神戸内定
成岡輝瑠(レノファ山口FC)

【未招集】
山根 陸(横浜F・マリノス)
早川隼平(浦和レッズ)
宇野禅斗(FC町田ゼルビア)
石浦大雅(愛媛FC)
※◎=主軸候補、〇=準レギュラー候補

 中盤は最も人材が豊富なポジションだ。ただし、現時点で飛び抜けた主軸がいないことも確かだ。分かりやすく100点満点で評価するなら、80点前後の選手ばかり。キャプテンの山本をはじめ川﨑、藤田、鈴木唯、松木を◎としたが、来年のU-23アジア杯、さらにパリ五輪に向けて、突き抜ける存在が出てきてほしい。ちなみに今回は対象外にしているが、すでにA代表の主力である久保建英もパリ五輪世代だ。もちろん久保を招集できればメダル獲得に向けて大きな力になるが、そこに頼るのではなく、良い意味でのプラスアルファになるぐらい、ハイレベルの競争になっていってほしい。

 さらにバイエルンで奮闘する福井と欧州から湘南に復帰した田中を〇にしたが、4-3-3の場合と4-2-3-1の場合でポジションが変わってくる。◎と○の候補で言うと、4-3-3なら藤田と川﨑がアンカー、山本、松木、鈴木唯はインサイドハーフ、左利きの田中は両ポジションで起用されると見られる。三戸舜介(アルビレックス新潟→スパルタ・ロッテルダム)もインサイドでプレーできるが、今回はアルゼンチ戦で起用されたサイドのほうにリストアップした。

 無印の選手では湘南で持ち前のテクニックに加え、飛び出しのセンスも磨いている平岡、アジア大会で直接フリーキックゴールを決めるなど、個人で違いを生み出せる能力を見せた谷内田、大宮から夏に移籍したC大阪で成長中の柴山など、ここからの成長次第でパリ五輪行きも十分に可能なタレントが多い。

 未招集で一気に序列を覆す可能性があるのは山根だ。横浜FMで中盤の主力に定着しており、ここまで選ばれていないのが不思議なほど。もしかしたら、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)もあり過密日程が続いたクラブに専念したのかもしれないが、J1で終盤まで優勝を争ったクラブで主力を担ったことで掴んだものに疑いの余地はなく、U-23アジア杯でいきなり招集される可能性は大いにある。

サイドアタッカーの主力MF斉藤光毅は怪我の状態が気掛かり

<サイドアタッカー>
◎斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム)
◎佐藤恵允(ブレーメン)
◎三戸舜介(アルビレックス新潟→スパルタ・ロッテルダム)
◎山田楓喜(京都サンガF.C.→東京ヴェルディ)※期限付き移籍
〇松村優太(鹿島アントラーズ)
〇近藤友喜(横浜FC)
平川 悠(FC町田ゼルビア)
角昴志郎(筑波大)
小見洋太(アルビレックス新潟)
宮城 天(モンテディオ山形→川崎フロンターレ)※期限付き復帰
新井悠太(東洋大)※東京ヴェルディ内定<2025年加入>
鶴野怜樹(アビスパ福岡)
甲田英將(東京ヴェルディ)

【未招集】
佐野航大(NECナイメヘン)
武田英寿(水戸ホーリーホック→浦和レッズ)※育成型期限付き復帰
古川陽介(ジュビロ磐田)
俵積田晃太(FC東京)
横山歩夢(サガン鳥栖)
樺山諒乃介(サガン鳥栖)
※◎=主軸候補、〇=準レギュラー候補

 サイドアタッカーは個性的なタレントが揃うが、大岩監督の方向性からすると、やはり1対1で勝負できる選手が選ばれやすい。◎は斉藤、佐藤、三戸、山田の4人。基本的には左が斉藤と佐藤、右が三戸と山田になる。不安要素としては攻撃の主翼として期待される斉藤が今年10月に右太ももの手術を受けて離脱中であること。来年1月に復帰予定とされるが、その回復具合によって、U-23アジア杯に招集できるかが変わってくるかもしれない。

 三戸は今冬、新潟から斉藤の所属するオランダ1部スパルタ・ロッテルダムに移籍。斉藤の実績もあり、イエルン・ライスダイク監督の下でチャンスを与えられる可能性が期待できるが、そこから先は三戸自身が切り開いて行くしかない。〇にした松村は佐藤とともに、アジア大会でアピールして、11月のアルゼンチン戦にも招集された。鹿島では前半戦でなかなか出番を得られず、一時は期限付きでの移籍も考えたようだが、苦難を乗り越えて出場時間を掴み取った。もともと右サイドでの起用が多かったが大岩ジャパンでは左サイドで起用されており、ポリバレントな能力も強みになりそうだ。近藤も鋭いドリブル突破を武器とするが、横浜FCがJ2降格となり、パリ五輪を見据えると動向は気になるところだ。

 無印の選手でここから序列を覆す期待が高いのは宮城だ。今年は川崎から長崎に期限付き移籍したが出場機会に恵まれず、夏に同じJ2の山形に環境を変えた。渡邉晋監督の信頼を得て、終盤の連勝街道で昇格プレーオフに進出する立役者となった。シーズン後に左内側半月板損傷の手術を行い、復帰はJ1の開幕後になると見られる。ミドルシュートの決定力は特筆に値し、代表で仲の良かった三戸の欧州移籍にも刺激を受けているはず。パリ五輪までの残り半年間で一気の逆転もあり得る。

 名前を挙げた未招集のタレントは個性的なタレントばかりだが、招集メンバーに比べると、所属クラブでの継続的な活躍が逆転の条件になってくる。浦和への復帰が決まった武田は左利きの特性を生かして、インサイドに流れて勝負するタイプ。三戸と同じく2列目のインサイド、あるいはボランチでもプレーできるポリバレントなタレントだ。

A代表メンバー候補でもある細谷は、五輪代表と兼任の可能性も

<CF>
◎細谷真大(柏レイソル)
〇小田裕太郎(ハーツ)
〇藤尾翔太(FC町田ゼルビア)
〇西川 潤(サガン鳥栖)
〇内野航太郎(筑波大)
福田師王(ボルシアMG)
植中朝日(横浜F・マリノス)
染野唯月(東京ヴェルディ)
鮎川 峻(大分トリニータ)
熊田直紀(FC東京)
中島大嘉(名古屋グランパス)
櫻川ソロモン(ファジアーノ岡山)

【未招集】
後藤啓介(ジュビロ磐田→アンデルレヒト)※期限付き移籍
貴田遼河(名古屋グランパス)
大森真吾(北海道コンサドーレ札幌)
坂本一彩(ファジアーノ岡山)
※◎=主軸候補、〇=準レギュラー候補

 CFはA代表にも招集されている細谷が1つ抜けた存在になっている。ただ、彼の場合は来年1月のアジアカップに行く可能性もなり、そうなるとU-23アジア杯に呼べるのかは不透明だ。欧州クラブからの強い関心が伝えられるなかで、もし柏に残留すればクラブが全力でパリ行きをバックアップするはずで、両方の大会に参加する選択肢もゼロではない。大岩監督としては細谷が予選に参加できない場合にも備えておく必要はあるだろう。

 細谷に続くのは、アルゼンチン戦でスタメン起用された海外組の小田を筆頭に、怪我による離脱前までは大岩ジャパンの常連だった藤尾、2列目と両ポジションをこなせるテクニシャンの西川、大学1年生ながら本格派の大型ストライカーとして急成長中の内野あたり。彼らと全くタイプの異なる鮎川もサイドとのポリバレントで入り込む余地はある。さらにアルゼンチン戦で衝撃的なゴールを決めた福田、大岩監督から横浜FMで磨いたプレスを高く評価される植中、鹿島から期限付き移籍ながら、東京VをJ1昇格に導いた染野唯月と興味深いタレントが揃う。

 未招集組でやはり面白いのは後藤だ。今年は高校生JリーガーとしてJ2で7得点を記録して、磐田のJ1昇格に大きく貢献、夏から獲得を望んでいたというベルギーの名門アンデルレヒトで新たな挑戦を始める。2005年生まれで大宮のDF市原吏音や浦和のMF早川隼平と同じロス五輪世代だが、飛び級でのパリ行きを本人も強く望んでいる。名古屋の貴田も途中出場ながらリーグ戦12試合を経験しており、来シーズン開幕からブレイクすれば滑り込みも期待できる。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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