浦和MF伊藤敦樹、欧州王者シティとの対戦は「本当に財産」 世界トップから学んだボールの動かし方とは?【現地発】

浦和の伊藤敦樹【写真:ロイター】
浦和の伊藤敦樹【写真:ロイター】

シティに0-3で敗戦も収穫もあった

 浦和レッズの日本代表MF伊藤敦樹は、現地時間12月19日にサウジアラビア開催のクラブ・ワールドカップ(W杯)準決勝で欧州王者マンチェスター・シティ(イングランド)に0-3で完敗した試合を終え、「こうやってアジアチャンピオンとして挑めたことは自分にとって本当に財産になる」と話した。

 浦和は15日の大会初戦で北中米カリブ海代表のクラブ・レオン(メキシコ)に勝利。ある意味では、大会本番とも言える欧州代表と南米代表が登場する準決勝に進んだ。そして、そこに立ちはだかった相手こそ現在の世界最強クラブとしても呼び声の高いシティだった。浦和はこのシティ戦だけいきなり5バックをやるなど特殊な戦略を持ち込むのではなく、通常通りのシステムで入っていった。伊藤もまた、ダブルボランチの一角としてMF岩尾憲とコンビを組んで対峙した。

 浦和のプランはロングカウンターと、中盤で引っかけたところからのショートカウンターの2つを虎視眈々と狙うこと。中でも後者のキーマンの1人が伊藤だった。185センチの恵まれた体格を持ち、J1ではインターセプトや球際のボール奪取に長所を出して今季のベストイレブンにも輝いた。しかし、そこでボールを奪えない。気が付けばFWホセ・カンテまで自陣で必死に守備をしていた。

 まずはボールの動かし方、選択肢の作り方について「ポジショニングがいいですし、自分のところで大体2人以上の選択肢が絶対にあるので、そういった中で、読みだけでは取れない部分もありましたし、それで自分が先に動いてしまうと逆を突かれる、特にロドリ選手だったりコバチッチ選手だったり中盤の選手は本当にボールの置き所がうまかったですし、自分が本当に狙っているのがわかっているのかっていうぐらいのところにボールを置かれて、体も入れられて、という感じだった」と話す。

 そのうえで、球際に持ち込めるかという場面に関しては「取れそうなところで、全員が体をしっかりボールと自分の間に入れてきますし、もう1歩のところで奪いきれないところが何個かあったので。自分の感覚では奪えた感覚だったんですけど、そこで奪えなかったり、ファウルになってしまうというのは、もう一個自分が上に行かないといけないところだなと思う」と、対峙して感じた差を口にした。

 惜しむらくは、決してベストコンディションではなかったこと。11月12日のJ1ヴィッセル神戸戦で膝を負傷し、12月3日のJ1最終節の北海道コンサドーレ札幌戦で復帰したものの、この大会の公式トレーニングなどでもテーピングで固めている姿があった。伊藤自身は「今日に関しては今までよりも、固定しすぎていて動きづらかったんでそれを外して。ほとんどテープしていない状態でやったんで、今までよりは全然動きやすかった」と話したが、プレーのリズム、試合を消化しながらコンディションを維持して上げていくという部分ではトップにはなかった。

 それでも、「ボールを何回か奪えたシーンは自分が通用したところでもあるので、そこら辺は手応えをいい感じに感じられました」と話す。浦和は1年半後に32チームへ拡大される新たなクラブW杯への出場権も確保している。自身は日本代表にも選出され2026年の北中米W杯も目標になる。伊藤は「そのイメージは常にしています。その手応えも感じましたし、やれる部分もありました。もっともっと、足りないところも感じましたし、そういった意味でも、こうやってアジアチャンピオンとして世界王者に挑めたことは自分にとって本当に財産になりますし、これからまた世界を相手にして戦っていきたいなっていう気持ちはすごく芽生えた」と、悔しさを露わにした表情から少し前を向いた。

 3位決定戦は、アフリカ代表アル・アハリ(エジプト)と対戦する。2007年に浦和が初出場した際の最高成績に並ぶチャンスであり、長いシーズンの最終戦。約60試合を駆け抜けてきた25歳は、「勝って世界3位で終わって今シーズンをしっかり締めくくって、来年からまた世界を目指して頑張りたい」と話していた。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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