浦和が唯一の3万人超え…今季Jリーグ平均観客動員に見る「法則」と「地の利」 東京23区内にJクラブがないのは大失敗【コラム】

2023年に最も多くの観衆を集めた浦和の埼玉スタジアム【写真:徳原隆元】
2023年に最も多くの観衆を集めた浦和の埼玉スタジアム【写真:徳原隆元】

平均観客数では浦和が今季最多、収容可能人数に対する割合では神戸がトップ

 2023年に最も多くの観衆をホームスタジアムに集めたのは浦和レッズだった。平均3万509人で唯一の3万人超え。浦和の埼玉スタジアム2002は収容人数6万人を超えている国内有数の大きさだ。7万人超の日産スタジアムをホームとする横浜F・マリノスも平均で2万7719人を集めていて第3位。2位のFC東京(平均2万9410人)のホーム、味の素スタジアムも収容4万7851人と大きい。

 多くの観客が見込めるからスタジアムが大きいのか、収容人数が多いので人が集まるのかは分からないが、デンカビッグスワンスタジアム(収容4万1684人)のアルビレックス新潟も平均観客数で6位、豊田スタジアム(収容4万3739人)の名古屋グランパスは4位。スタジアムが大きければ観客も多いという法則はありそうである。

 収容可能人数に対しての平均観客数の割合では、優勝したヴィッセル神戸がトップの約75%だった。ノエビアスタジアムの収容人数2万9913人に対して平均観客数は2万2553人。シーズンを通して優勝争いをしていて最終的には優勝しているので、当然の結果と言えるかもしれない。

 川崎フロンターレも等々力陸上競技場の収容率は74%と高い。収容人数は2万6827人。この規模のスタジアムは観客がぎっしり埋まる感じでスタジアム熱気という意味ではちょうど良いのかもしれない。セレッソ大阪も収容率70%、ヨドコウ桜スタジアムは2万4481人収容だ。

 リーグ全体の動員数という点では国立競技場の開催が効いている。第22節の名古屋vs新潟で5万7058人、第13節の鹿島アントラーズvs名古屋が5万6020人。やはり第13節、2日違いのFC東京vs川崎フロンターレは5万6705人だった。国立競技場の開催試合は軒並み大入り。J2も含め、どのカードでも人を集めていたのは都心の地の利だろう。

 観客動員に限って言えば、東京23区内にJクラブを作れなかったのは大失敗だったのではないだろうか。世界的にも首都には人気チームがあるもので、複数存在していることも珍しくない。FC東京と東京ヴェルディ、来季はJ1に東京のチームが揃うことになるが、どちらも23区内にはない。30年間トップリーグに都心のチームを持てなかった。

 観客動員数はスポンサー収入、放映権料と並ぶ3本柱と言われてきた。特に観客数はスポンサー獲得にもつながるので収入の核だったのだが、今後はそれも変わってくる可能性があるし、すでに変わっているかもしれない。インターネットの動画再生数などが新たな指標になってくるだろう。マドリードの巨大スタジアムにその名が冠されているサンチャゴ・ベルナベウ(レアル・マドリー元会長)は、かつてこう言っていた。

「多くの人々がテレビ観戦する一方で、試合はがらがらのスタジアムで行われるだろう」

 およそ50年経ってもまだスタジアムは観衆で埋まっているが、この先も同じかどうかは分からない気もする。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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