J2清水、自動昇格圏→“急失速”はなぜ起きた? まさかの転落劇に潜む「誰も答えを見出せない」積年の課題【コラム】

清水はリードを守り切れずにJ1昇格を逃した【写真:徳原隆元】
清水はリードを守り切れずにJ1昇格を逃した【写真:徳原隆元】

2度あった自力昇格のチャンスを逃し、今季の唯一最大の目標であるJ1昇格を逸す

 清水エスパルスのJ1復帰は叶わないまま、2023シーズンは幕を閉じた。リーグ最終盤まで自動昇格圏に位置しながらも、最終節の結果を受け4位へ転落。POでの昇格も逃す形になった。J2随一の戦力を誇ったチームはなぜ、失速したのか。その背景に迫る

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 J2では飛び抜けた戦力を持つと言われ続けてきた清水が、2度あった自力昇格のチャンスを逃し、今季の唯一最大の目標であるJ1昇格を手にすることができなかった。

 12月2日に行われた昇格プレーオフ決勝・東京ヴェルディ戦では、後半アディショナルタイムまで1-0でリードしながら終了間際に無用なPKを与えて勝ち切れず、無念の涙を流した。

 さらに遡ると、リーグ最終節の水戸ホーリーホック戦で勝てば自動昇格という状況だったものの「今シーズンで一番良くなかったと言っていいぐらい」(乾貴士)の内容でまさかの結末を招いた。

 前半はシュート0本。後半にはミスから先制点を奪われ、1点を返すのが精一杯で1-1ドローに終わり、東京Vにも抜かれて4位でフィニッシュ。プレーオフ決勝が引き分けではアウトという状況に陥ったなかで、前述の結果になった。

 それだけでない。第36節までは14戦無敗とクラブ記録を更新し、その間は無得点が2試合で、無失点が8試合。当時は筆者も「攻撃にも守備にも穴がなく、J2で最も倒すのが困難なチーム」と感じていた。だが、残り6試合になってから藤枝MYFCとロアッソ熊本という下位のチームに敗れて3勝1分2敗と急失速してしまう。

 藤枝には0-2で完敗し、熊本には今季唯一の逆転負け(1-3)。格下に対する油断があったのかどうかは分からないが、そう指摘されても言い返せない内容と結果だった。プレーオフ決勝のようにアディショナルタイムに失点して勝利を逃した試合は昨年も多く、それがJ2降格の大きな一因となった。

 緩み、脆さ、勝負の時間帯での自信や冷静さの不足、そして勝負弱さ……。どれもメンタル面と密接に絡んでくるが、ではチームとしてどう改善すれば良いかという話になると、誰も答えを見出せていない状況にある。選手が入れ替わっても同様の課題が何年も継続し、力はあるけど大事なところで勝ち切れないチームになってしまっている。東京V戦後、清水サポーターは「またか……」というやりきれない悔しさと、どう向き合っていたのだろうか。

長年に渡る課題の抜本的解決がクラブとしての最大のミッション

「藤枝戦や熊本戦も水戸戦もそうだし、ここ大事だよというゲームで勝ち切れない。気持ちの問題なのか、自分たちの実力が足りないのか。そこは分からないですけど、チャンスを何度も何度も逃した結果がこれ。メンタル状況が難しくても、普段どおりにやれなくても、それでも勝つのが強いチームだと思うし、そう考えるとまだまだ力が足りないのかなと思います」と、白崎凌兵は言葉を振り絞った。

「これだけ勝負弱いということは、自分たちがJ2のチームだということだと思います。去年からアディショナルタイムに追い付かれるとか勝ち切れない試合が続いてるので、何かを変えなければいけないけど……今はちょっと考えられないですけど、自分自身も含めもっともっとレベルアップしないといけないと思います」。試合直後の乾も答えを見つけられずに苦しんでいた。

 ただ、その答えを見つけ出す責任は、選手や監督以上にクラブの首脳陣にあるのではないだろうか。

 国立競技場から帰る電車内で静岡への帰路につくオレンジ色のサポーターを何人も見かけたが、子供たちも含めて誰もが本当に落ち込んだ表情を見せていたことに胸が締めつけられた。来年J1に昇格したとしても、すぐにまた降格してしまうようでは、彼らの無念は晴らし切れない。

 だからこそ、長年に渡る課題を抜本的に解決していくことが、何より重要なクラブとしてのミッションとなるはずだ。

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前島芳雄

まえしま・よしお/静岡県出身。スポーツ専門誌の編集者を経て、95年からフリーのスポーツライターに。現在は地元の藤枝市に拠点を置き、清水エスパルス、藤枝MYFC、ジュビロ磐田など静岡県内のサッカーチームを中心に取材。選手の特徴やチーム戦術をわかりやすく分析・解説することも得意分野のひとつ。

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