不振のドイツ代表が抱える大きな悩み 選手も嘆き「寄せ集め」…なぜ「強さの源」は失われたのか【現地発】

ドイツ代表の不振の要因とは?【写真:ロイター】
ドイツ代表の不振の要因とは?【写真:ロイター】

母国開催の24年EUROが今やストレスでありプレッシャーに

 母国開催の欧州選手権(EURO/ドイツ開催:2024年6月14日~7月14日)というのは喜びであり、モチベーションであるはずだった。だが今のドイツ代表にとって、それは大きな悩みであり、ストレスであり、プレッシャーになってしまっている。

 11月の代表シリーズではトルコ代表にホームで2-3、そしてウィーンで行われたオーストリア代表とのアウェー戦も0-2で敗れた。

 DFマッツ・フンメルスはオーストリア戦後にこんな言葉をこぼしている。

「今日のゲームは自分たちの問題点を見事に示したものになった。僕らは、それぞれはいい選手だけど、まだその寄せ集めでしかない。ドイツにおけるクラシカルな美徳がなければ」

 オーストリア代表監督ラルフ・ラングニックの指摘が傷口に沁みる。

「ドイツは、選手それぞれのクオリティーは間違いなくある。十分すぎるほどある。各トップクラブの主力ばかりだ。でもサッカーはチームスポーツだ」

『ワールドクラスの選手を輩出する』という目標を掲げたのが、つまずきの始まりだったのかもしれない。14年ブラジル・ワールドカップ(W杯)で優勝し、さらなる成長のためには各ポジションにワールドクラスの選手を揃えたいと当時監督だったヨアヒム・レーブは口にしていたし、ドイツサッカー協会はそのためのプランを考えようとした。

 でもドイツがドイツたるゆえんは、チームとしての強さだったのではないか。

 14年W杯優勝後にバスティアン・シュバインシュタイガーが言っていた。

「オランダにはアリエン・ロッベン、ブラジルにはネイマール、アルゼンチンにはリオネル・メッシというワールドクラスの選手がいる。僕らにはいないかもしれない。でもチームとしての僕らはワールドクラスだ」

 チームのために力を発揮する。チームの中で力を発揮する。それがドイツの強さの源だったし、だから相手チームはそんなドイツとの試合を嫌がった。

 今のチームもまとまりはある。ユリアン・ナーゲルスマンはオーストリア戦後にそのことについて、記者会見で言及していた。

「ピッチ外でまとまりを感じられている。みんな話し合いを長くしていた。選手個々とのコミュニケーションは素晴らしくやりやすい」

 でもそれがピッチで反映されない。アイデアが見られない。バランスが噛み合わない。順応が追い付かない。

「クラブでのパフォーマンスを代表でも発揮できる形を模索しているが、多くの選手が自分のプレーで手一杯になっている。ここ数年のネガティブな思いを抱え込んでしまっていると感じている。でもそこから抜け出さなければ」

ブロックごとに「相性のいい組み合わせ」を作り出すほうほうがいいのでは?

 チーム全体の意思をまとめ上げて、イメージを作り上げて、それこそ無意識のうちに次にやるべきプレーへと連続して移行できるようになることが望ましい。ただ今の年間スケジュールでは、代表チームでそこまで落とし込める時間は現実問題ない。

 それならせめて、チーム全体では難しくても、ブロックごとに相性のいい組み合わせを作り出すほうがいいのでないだろうか。

 例えば、レバークーゼンで抜群のハーモニーを奏でているMFフロリアン・ビルツとMFヨナス・ホフマンのコンビを同時起用したら、そこでのタイムラグはなくなる。

 せっかくアメリカ遠征でMFイルカイ・ギュンドアンとMFパスカル・グロスの相関性の良さが証明されたのに、それを使わないのはもったいないのではないか。ボルシア・ドルトムントのブロックを使うなら、それこそDFニコラス・ズーレ、DFフンメルス、DFニコ・シュロッターベックを同時起用したほうがいいのではないか。

 FWレロイ・サネを最大限生かすのであれば、バイエルン・ミュンヘンで一緒にやっているヨシュア・キミッヒを右サイドバックで固定し、カイ・ハフェルツ(アーセナル)に合わせようとしている役割をしてもらったほうがいいのではないだろうか。

 一気に最大限の成果を狙わず、少しずつでも成功体験を積み重ねて、それを次に生かすというステップを踏んでいくことが、結局は遠回りのようで一番の近道だという事例は非常に多い。寄り道した挙句に迷子になるよりもよっぽどいい。

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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