森保ジャパンの「放置できない問題」とは? 日本代表OBが指摘「隠しているのか分からないが…」【見解】
【専門家の目|金田喜稔】改善に取り組むも「セットプレーは明確な課題の1つ」
森保一監督率いる日本代表は、10月13日にカナダ代表(4-1)、17日にチュニジア代表(2-0)と戦い、2連勝で10月シリーズを終えた。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、「日本はさらに強くなれるだけに、この問題を放置しておくことはできない」と森保ジャパンが抱える課題を指摘している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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チュニジアに2-0と勝利し、10月シリーズも連勝で終えた日本はここまで6連勝を飾り、そのなかで24得点5失点の好成績を残すなど強さを見せつけている。金田氏は、攻守ともに高い機能度を保つチームの成長と完成度の高さを評価する一方、さらなる飛躍を見据えてチームの課題を掘り下げている。
「隠しているのかどうか分からないが、セットプレーは明確な課題の1つだろう。攻撃でのセットプレーで言えば、キッカーもそうだし、中で合わせる選手も含めてあまり怖さがない。選手の高さがないのかと言えば、決してそんなことはない。にもかかわらず、セットプレーからゴールの匂いがあまりしない、怖さがあまりないというのは大きな問題だ。以前は日本に名キッカーが多く揃い、強豪国と対戦する際にもセットプレーは強力な武器になっていた。セットプレーを強化すれば、日本は好調な今よりもさらに強くなれるだけに、この問題を放置しておくことはできない。それは代表チームも把握して改善に取り組んでいるわけだが、なかなか目に見える結果となっていないのが実情だ」
また金田氏は、森保ジャパンが抱える不安要素の1つとして「ロングボール対応」を挙げる。
「親善試合ではなかなか強化が難しいが、ロングボール対応も日本が抱える不安要素の1つだ。高さを駆使した攻撃やシンプルなロングボールの放り込みがそれにあたる。アジアの戦いでもよく見られるが、どんどんボールを蹴り込んで、そのこぼれ球を拾い、数少ないチャンスを狙うという代表チームもある。日本とがっぷり四つで対峙したら勝ち目が小さいと判断し、勝てる確率が上がるサッカーを仕掛けてくるのは当然だろう」
アジア諸国の割り切ったスタイルを警戒「日本のリズムが崩れてくる可能性も」
W杯アジア2次予選が11月からスタートし、森保ジャパンは同16日の第1節でミャンマー(ホーム/パナソニックスタジアム吹田)、同21日の第2節でシリア(アウェー/未定)と戦う。金田氏は、日本と戦うアジア諸国の割り切ったスタイルに警戒を強める。
「実際、これまでの日本もそうした圧力に押されて失点したケースもあれば、敗れた試合もある。まぐれでも、泥臭くても、ファウルになってもいい。一般的には確率の低い攻撃だが、それでもワンチャンスを狙うというスタイルだ。それが数回続くぐらいであればさほど怖くはないが、何十回もそうした攻撃を続けられると、日本のリズムが崩れてくる可能性もある。相手は当然そこを狙ってくるわけだ。日本としては、そこに不安を抱えていると分かっていても、こればっかりは親善試合でなかなかそうした展開にならないため、本番で臨機応変に対応していく以外にない」
W杯アジア2次予選は24年6月まで続き、来年3月には北朝鮮とのホーム&アウェー戦、6月には敵地でのミャンマー戦とホームでのシリア戦を予定。グループ上位2か国が3次予選(24年9月~25年6月)へと進む。
「森保監督はよく『我慢』と言っているが、相手との相対的な関係で日本の立場も変わる。アジアでは日本が格上になることが多いだろうし、世界では日本が格下になることもある。アジアでの戦いと世界での戦いでは『我慢』の形も変わってくるが、それでも自分たちのサッカーをする点は変わらない。平常心でどこまでできるか、というのがアジア予選でも問われる」と、金田氏は展望していた。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。