南野拓実は変わった 重圧から解放…“チャレンジャー”として臨む第2次政権「W杯の時は背負う気持ちの方が強くて…」【コラム】
「背負った」W杯…「フレッシュ」に臨んだ10月シリーズ
日本代表MF南野拓実(ASモナコ)は10月シリーズでカナダ代表戦(4-1)、チュニジア代表戦(2-0)に出場。インサイドハーフやトップ下でプレーしてゴールこそなかったものの、自身の良さを発揮した。昨年は所属クラブやカタール・ワールドカップ(W杯)で苦しんだなか、今シリーズでは精神的な変化もあり、フラットな気持ちで臨んだ。これまで年代別代表でも背負い続けてきた男は清々しい表情を見せていた。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小杉舞)
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南野の表情は一点の曇りもなかった。「サッカーが楽しい」という気持ちが全身から溢れ出ていた。カナダ戦ではスタート時にインサイドハーフ起用され、試合中にトップ下へと可変しながらさまざまなポジションに顔を出して攻撃を組み立てた。チュニジア戦では途中出場になったが、右サイドハーフに入ったMF久保建英ともいい連係を見せ、気の利いたポジショニングで自身も周囲も生かした。あとはゴールだけ、というところだったが確実に持ち味を出した
「(フィニッシュは)技術的な部分だと思うし、気持ちの部分では、気持ち良くプレーできている。狙うべきことがハッキリしているし、やるべきことがハッキリできている」
気持ち良くプレーできているという言葉。森保ジャパン第1次政権の立ち上げ当初から中心として牽引してきた。初陣の2018年9月11日コスタリカ戦(3-0)から3試合連続でゴール。2019年の2次予選では5試合連続で得点した。だが、10番を付けて臨んだカタールW杯では4試合中3試合の途中出場に終わった。そして、W杯後には選外。約1年ぶりに戻ってきた代表の舞台では気持ちが明らかに違っていた。
「W杯の時は背負う気持ちの方が強くて、チームのために何ができるかを一番に考えた。今はメンバーもスタッフも変わってフレッシュな気持ち。自分としてももう1度リセットしたフレッシュな気持ち、ハングリーな気持ち、ギラギラした気持ちで代表に来た。チームのことが第一は変わらないけど、そういうギラギラしたものは違うかもしれない。逆に背負うというはそれは幸せなことで、W杯でプレーできたからこそ感じられた。また1人のハングリーな選手としてやっていきたい」
そう話す南野に「肩の荷が下りた?」と聞くと「そうかもしれないですね」と返ってきた。決して誰かに押し付けたわけではなく、一皮むけた南野の姿があった。
思えばずっと背負ってきたサッカー人生だった。プロ2年目の2014年、当時所属していたセレッソ大阪は残留争いを強いられた。夏にエースのFW柿谷曜一朗が海外移籍し、19歳だった南野はクラブの危機を打破するために大きな期待を寄せられた。16年にはエースとして牽引したリオ五輪。1月にカタール・ドーハで開催された集中開催の最終予選では一発勝負のなかで、重圧がのしかかった。本大会ではダブルエースの1人、FW久保裕也がクラブ事情で招集できず。再び南野が背負うこととなった。
そして10番を付けて臨んだ昨年のW杯。周囲からは批判の声を含めてさまざまな意見が寄せられた。知らず知らずのうちにプレッシャーは大きくなり、自分を抑え込んででも森保ジャパンが勝利を掴むために、悩み、苦しみ、必死にプレーした。
南野は28歳になった。サッカー選手として最も脂がのっている時期だろう。今季はモナコでも3ゴール3アシストと結果を残している。満を持して復帰した代表の舞台。原点回帰の「ギラギラした気持ち」は日本代表にとっても、南野自身にとっても大きな変化だ。そしてこの変化は必ず好転する。今シリーズ、オフ・ザ・ピッチや練習中で本当に南野の笑顔が多く見られた。率先して“盛り上げ役”もこなしていた。これからは「チャレンジャー」として、また新たな南野が見られることだろう。