中山雄太の復帰でどう変わる? 森保ジャパン、左サイドの優先順位の“変動率”【コラム】

森保ジャパンの左SB最適解は?【写真:Getty Images & 徳原隆元】
森保ジャパンの左SB最適解は?【写真:Getty Images & 徳原隆元】

左サイドバックに一番求められるのは「三笘がいかにプレーしやすくなるか」

 森保一監督率いる日本代表の左サイドは誰がいいのか。

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 2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選では長友佑都と中山雄太が併用された。前半は、左アウトサイドの南野拓実が中央に顔を出して、その空いたスペースを長友がカバーするという戦い方を続け、後半の勝負どころで左サイドにスピードのある選手、浅野拓磨などを入れ、そこにボールを送り込む役として中山が途中交代で出場していた。

 2022年11月1日に発表されたカタールW杯のメンバーには中山も名を連ねた。ところが翌2日の試合でアキレス腱を負傷。長期離脱を余儀なくされ、3日には代表チームからの離脱が発表される。

 そこから約11か月、やっと中山が戻ってきた。9月2日のリーグ第5節ウエスト・ブロムウィッチ・アルビオン戦で途中出場を果たすと、9月20日から5試合連続で先発メンバーに名を連ね、途中交代は1回のみ。ピッチに戻った途端、全力で走り回っている。

 9月シリーズンのドイツ戦、トルコ戦では伊藤洋輝が2試合とも先発して90分を戦い抜いた。中山の復帰で伊藤洋との2枚看板が揃い、長友が抜けた穴はついにカバーされた——となるだろうか。

 カタールW杯の時から日本代表は劇的な変化を見せている。まずW杯では3バックの比重が高くなった。また南野に代わって三笘薫が先発に定着している。メンバーは若返り、新しい選手が入ってくるとともに、前線の選手の成長も著しく、すでにまるで別のチームと言ってもいい。

 南野から三笘に代わったことで、サイドバックに求められることも変わった。南野と違って三笘は左サイドに重心を置く選手。となると、スペースを埋めるために上がるのではなく、三笘がいかにプレーしやすくなるかを考えてポジションを取らなければならない。

 駆け上がる回数を増やすのではなく、ダブルマークに遭いやすい三笘がボールを戻して受け直したいとき、適切な距離の適切な位置にいなければならない。あるいは、三笘のためにスペースを作る動きが求められると言っていいだろう。

 単純に左サイドのうしろに居続けても、三笘なら1人でどうにかしてくれるかもしれない。ただ、それでは警戒されるドリブラーの突破力を最大限まで引き出せることにはならないだろう。

10月シリーズは三笘が活動自休、中村や奥抜と連係できるか

 また、日本のもう1つのストロングポイント、右サイドの伊東純也は確実に突破してクロスを入れてくる。その時、三笘がペナルティーエリアの中に詰めていった、その外側は左サイドバックの担当地域となる。加えて、森保ジャパンではセンターバックがサイドチェンジの役割を担っているが、これがサイドバックから逆サイドに供給できるようになれば、今よりもサイド攻撃は生きてくるはずだ。

 さらに、現在の日本代表が試している、サイドバックがボランチの位置に入り攻撃の組み立てに参加するという新しい戦術への対応も求められる。そんな適性を誰が持っているのか、それを今の日本代表は見極めようとしている。

 10月9日、始まった日本代表の練習後に中山は怪我からの復帰と、現在の日本代表への対応についてこう語った。

「新しい中山雄太として帰るっていうところを頭に置いてやっていたので、それがほんとにしっかりとプレーで出せれば。プレーを楽しみにしていただければと思います」

「(W杯前と左サイドバックの役割が変わっていることは)自分的には、W杯を逃したからというのも関係なく、どんな状況にかかわらず代表のレギュラーの座っていうのは取っていきたいという気持ちを強く持っています。あまり今までの(怪我で招集されなかった)期間は、そこまで影響しないと思います」

「(日本代表の新戦術については)正直、どのスタイルでも(自分は)できると思っていますし、自信があるので。あとはチームとしてどう動くかはありますけど、すべてはプレーで語ればいいと思うので、そこで判断していただければと思います」

 中山のこの自信には裏付けがある。これまでこなしてきたポジションはボランチ、センターバック、左サイドバック、最近は左のウイングバックとして出場を続けている。複数のポジションをこなすことについての問題はないだろう。

 これまで課題とされた攻撃のサポートについては、三笘が左サイドに入ればむしろ守備を重視したほうがいいため、問題はなくなる。ただ、今回は三笘が体調不良で活動を辞退しており、代わりに左サイドで起用される可能性のある選手、中村敬斗や奥抜侃志らとどこまで連係できるかで評価が変わる。

 伊藤洋と中山の代表でのプレーぶりに現時点で大きな差はない。だがブランクのせいで序列は伊藤洋の下になったはずだ。今回の2試合でチャンスは与えられるだろうが、守備はともかく、組み立てと攻撃面で際立つ活躍をしなければ正ポジションは取れない。

 ただし、右サイドの菅原由勢が攻守両面で頭1つ抜け出しているのに対して、左サイドで決定的なプレーはまだ誰も見せていない。今後、パリ五輪世代が台頭してくる可能性も十分に残している。さらには、伊藤洋と中山に比べて元気ハツラツな、「5大会連続出場をめざします」と宣言した大ベテランも虎視眈々と狙っている。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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