日本代表、右SB争い激化…菅原VS橋岡VS「脅かすプレー」“新星”毎熊 W杯アジア予選でピッチに立つのは?
A代表デビュー戦で驚愕プレーの毎熊晟矢 菅原と橋岡は2試合でピッチに
今回の9月シリーズで印象的なパフォーマンスを残した選手は何人かいるが、“驚き”という点で印象に残ったのは毎熊晟矢の活躍だ。プレー時間はトルコ戦の45分だけだったかもしれない。ただ、初招集・初先発でピッチに立ったことを踏まえれば、その短い時間で放った輝きは明らかに今後につながるものだった。
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毎熊の何が良かったと問われれば、臆することなく自分のできるプレーを最大限出そうとしたことだろう。
「練習前にコーチからも寄せるところは、Jでも評価していると言われていましたし、そこプラス攻撃の部分でアクセントをつけるという部分が評価されているのかなと感じます」と、本人も語っていたが、まさにその言葉通りのパフォーマンスを披露。前半36分のアシスト場面では、素早い寄せからボールを奪取し、そのままドリブルで運んだところからのラストパスだった。
攻撃面ではボール捌きやポジショニングの妙も見せた。初めて組む堂安律や久保建英の「特に2人の動きはよく見るようにしていました」と話すように、状況に応じて中に入ったり、外に開いたりと立ち位置を修正。縦パスや中に刺すパスなど、周りをうまく使っていたのもポジティブな成果だった。
もちろん、失点に絡む守備については本人も猛省するように明確な課題となったが、初陣としては十分なパフォーマンスを見せたことは間違いない。
これによって面白くなってきたのが右サイドバック(SB)のポジション争いだ。毎熊は「初めて入った選手がいまいるメンバーを脅かすくらいのプレーをしないといけない」と話していたが、今回の出来により菅原由勢と橋岡大樹が争う右SBに新たな風を吹き入れることになった。
現在、右SBの主力となっている菅原はドイツ戦で先発フル出場。「どこの世界でも求められるのは数字。守備陣でもアシストを付けられるんだったら付けた方がいいし、特に僕に関しては攻撃が長所だと思っているので、そこで数字を残さないと代表のポジションもない」と意義込み試合に入ると、対面のセルジュ・ニャブリをうまく封じながら逆に相手の背後を取る動き出しを披露して攻撃の起点に。チャンスと見るや右サイドを駆け上がり先制点をアシストすれば、2点目も同じような仕掛けから今度は中をしっかりと見てマイナスのクロスを入れてゴールの起点となった。
そのほかの場面でも伊東純也との抜群の連係を見せ、チームとして取り組んでいるSBがインサイドに入ったパスワークにも対応するなど、見事なプレーで改めて主力の最有力候補であることを示した。
一方、橋岡はドイツ戦、トルコ戦ともに途中出場。こちらはゲーム展開的に守備への意識を強めに持つ“締める”役割を与えられたが、突破力のある相手を冷静なプレーで対応してみせた。特徴である攻撃の面では、隙を見て出て行こうとする姿勢も見られており、短い時間の中でも自身のできることは完遂していた。あとは先発でどれだけできるかが気になるが、高さもあってストッパーとしても期待できる点で橋岡も候補に上がってくるだろう。
毎熊の活躍により一気に熾烈さが増した右SBのポジション争い。クラブで実力を証明し、次の代表活動やアジア予選でメンバー入りするのは誰になるのか注目したい。
(林 遼平 / Ryohei Hayashi)
林 遼平
はやし・りょうへい/1987年、埼玉県生まれ。東日本大震災を機に「あとで後悔するならやりたいことはやっておこう」と、憧れだったロンドンへ語学留学。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることになった。帰国後、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。