森保ジャパン、熾烈競争の行方とメンバー選考の基準は? W杯アジア予選へ、代表OBが大胆提言「国内組主体でもいい」【見解】
【専門家の目|金田喜稔】森保監督の選考基準「ベースは献身性と強さだ」
森保一監督率いる日本代表は、9月9日のドイツ戦で4-1、12日のトルコ戦で4-2と快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、森保ジャパンの激化するポジション争いを予想しつつ、11月からスタートする2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア2次予選のメンバー選考について「国内組主体で臨んでもいい」と持論を展開している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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9月シリーズでドイツに4-1、トルコに4-2と勝利した森保ジャパン。6月のエルサルバドル戦(6-0)、ペルー戦(4-1)から4連勝を飾り、18ゴールを叩き出している。「相手も決して弱小ではないなかゴールラッシュが続いている。とはいえ、W杯を起点に考えると次は2026年で、まだ3年近くある」と語る金田氏は、今後の激しい競争を予想する。
「第2次森保体制が始動してから約7か月が経った。第1次森保体制で始動7か月頃を思い返せば、メンバーには中島翔哉、柴崎岳、山口蛍、香川真司、宇佐美貴史、乾貴士らが先発していたが、22年のカタールW杯では刷新されていた。継続性の違いがあるため一概に比較できないが、それでも3年もあればメンバーが大幅に入れ替わる可能性もある。競争は激しくなるし、調子の浮き沈み、怪我もある。またパリ五輪世代からの突き上げもあるだろう。現状でも選手層は厚いが、今後の競争によって代表チームはさらに活性化する。それは明るい材料で、今後の進化が楽しみで仕方がない」
その一方、今後も注目を集めるのがメンバー選考だ。金田氏は「どれだけメンバーの入れ替わりあったとしても、森保監督の選考には一定の基準がある」と説く。
「ベースは献身性と強さだ。誰が出ても攻守のタスクをサボらず、球際で激しく寄せてボールを奪い切る力を有している。そうしたベースの上に個々のクオリティーやチーム戦術を掛け合わせ、最適解を見出そうとしている。また『いい守備からいい攻撃』という指針も同じだ。そして『いい守備』で求められる水準も高い。極論すれば『1対1で負けない』に尽きるだろう」
基準をクリアした選手は森保監督の候補者リストに名を連ね、そこからさらに細かくふるいにかけられ、“森保パスポート”の認定対象候補が絞られていく。
「その基準はクリアして初めて『森保パスポート』をもらえる対象候補となるが、あくまで日本代表への入り口にすぎない。そこから先は個々のアピール次第だが、メンバー選考の根底にある価値観はぶれていないように思う。その基準は選手たちもすでに分かっているはず。今、日本代表に入っている選手たちは、当然そうした点を意識したうえで、自分の個性をいかに発揮できるかというところにチャレンジしている」
W杯アジア2次予選の国内組主体案は「いい選手が育っているからこその選択肢」
11月からW杯アジア2次予選がスタートする。北朝鮮、シリア、もう1か国(ミャンマーかマカ)と同居し、グループの上位2チームが3次予選に進出できる。金田氏は「アジアの戦いを決して甘く見てはいけないが、それでも力関係を考えれば、日本は難なく2次予選を突破するだろう」と展望し、国内組主体で臨む案を提案した。
「2次予選では大半の海外組をクラブでの成長に専念させ、国内組主体で臨んでもいいと思う。ハードな日程で海外組を毎回招集すればコンディションを崩したり、怪我をさせて成長の妨げになるかもしれない。実際、長距離移動の弊害はあるし、過去にも選手側から体調面を不安視する声が上がったこともある。国内組主体で臨めば、戦力の底上げ、新戦力の発掘、競争力の向上、新メンバーへの戦術共有など、さまざまな面でメリットがある。その後は海外組と国内組の融合を図ってもいいだろうし、使い分けながらチーム作りを続けてもいい。いい選手が育っているからこその選択肢だ」
10月13日のカナダ代表(デンカビッグスワンスタジアム)、同17日のチュニジア代表(ノエビアスタジアム神戸)を経てW杯アジア2次予選へ突入するなか、今後のメンバー選考にも注目が集まりそうだ。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。