ドイツ撃破の要因…森保ジャパンの新指針「渾然一体スタイル」 日本代表OBが太鼓判「強豪国に通じる戦い方」【解説】

金田喜稔氏が日本代表の戦い方を評価【写真:ロイター】
金田喜稔氏が日本代表の戦い方を評価【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】ドイツ戦勝利の裏にハイラインとコンパクト化

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、9月9日(日本時間10日)に敵地でドイツ代表(同15位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、「強豪国に通じる日本の新たな戦い方が見えた」とドイツ戦の戦いぶりを分析した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 金田氏は「ロジカルな戦い方をしていた。90分を通してプランを遂行できたという意味でも非常に意義のある試合だった」とドイツ戦を振り返り、勝因を分析する。

「前半は4-2-3-1システムで前線からの連動した守備をベースに、上田と鎌田がコースを限定し、三笘と伊東もサイドでのボール奪取を狙いながら、相手の縦パスも遠藤や守田がケアするスタイル。特筆すべきは、最終ラインの高いポジション取りと全体のコンパクトな陣形だ。後半3バックにしてカウンターもハマったし、攻守両面でドイツより日本が上回っていた」

 とりわけ強調したのは陣形のコンパクトさだ。「怖がらずに最終ラインを上げてハイラインを保ち、中盤もぎゅっと圧縮したような形でコンパクトさを維持した」と語る金田氏は、日本の成長を感じたという。

「カタールW杯ではカウンター主体だったが、今回は主導権を握りにいく意図が見えたし、森保監督をはじめ、コーチ陣が的確に分析・改善を図って日本代表のレベルが着実に上がっている印象を受けた。攻守において日本が主導権を握るというサッカーにトライし、この日はピッチ上で見事に体現していた」

 コンパクトな陣形が機能した背景には最終ラインの存在がある。冨安健洋と板倉滉を中心とした守備陣の対応力に金田氏も舌を巻く。

「ディフェンスラインは富安や板倉を中心に堅い。冨安と板倉は1対1の対応とスピードに自信があるし、高いラインを保つことで全体もコンパクトに保ち、前線からプレスもかけられる。前線から最終ラインまで非常にコンパクトで、相手がボールを保持する状態に応じて上下動も小刻みに行っていた。当然相手にフリーでボールを蹴らせてしまえば裏のスペースを狙われてピンチを招くことになるが、ボールホルダーへプレスをかけているし、仮に裏に蹴られてもスピードもあるから対応できる」

“守備と攻撃の一体化”を示す象徴的なシーン「強みを日本が生かした」

 ドイツ戦で高いラインとコンパクトな陣形が機能した象徴的なシーンとして、金田氏は日本のゴールにクローズアップし、守備と攻撃の一体化を挙げた。

「高いラインによるリスクもあるが、その反面メリットもある。日本の得点シーンを見れば分かるが、冨安がボール奪取と同時に右サイドへパスを展開し、その流れからゴールが生まれている。高いラインを保てば守備と攻撃が一体化し、高い位置でボール奪取から即ショートカウンターを発動できるわけだが、その強みを日本が最大限に生かしていた。2点目も冨安のサイドチェンジが起点となったが、あれがより後方でパス回ししていたら、ああした展開にはならなかった」

 相手が志向するスタイルや試合中の状況に応じて日本のスタンスも変わると前置きしつつ、強豪国に対する新たな戦い方の1つとしてドイツ戦の内容を高く評価している。

「全体のラインを押し上げているから生まれたゴールだったし、適切な距離感だったからこそ攻守が一体化していた。例えば、全体が間延びして全体のラインも下がっていれば、後方でパスはつなぐけれども効果的なパスを出せない展開となり、相手ブロックの外でつなぐプレーに終始していただろう。だがドイツ戦は守備と攻撃が渾然一体となり、ボールを奪った瞬間、近くではボールを預けられる距離に選手がいるし、1本のパスでチャンスに持っていける。強豪国に通じる日本の新たな戦い方が見えた」

 強豪国との対戦も見据えて練度に磨きをかける森保ジャパンにとって、ドイツ戦はさらなる高みを目指すための足がかりとなりそうだ。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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