惨敗ドイツと明暗…“最激戦区”が象徴する森保ジャパンの強さ 日本代表OB「それは凄さであり強み。相手からすれば厄介」【見解】

森保ジャパンの強さを金田喜稔氏が分析【写真:ロイター】
森保ジャパンの強さを金田喜稔氏が分析【写真:ロイター】

【専門家の目|金田喜稔】カタールW杯から変化した日本は「驚きの連続だった」

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング20位)は、9月9日(日本時間10日)に敵地でドイツ代表(同15位)と対戦し、4-1で快勝した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏は、日本代表について「ベテラン勢の不在をまったく感じさせない安定感と強さがある」と称賛し、底上げされているチーム力の要因を紐解いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ初戦でドイツと対戦した日本は、前半に主導権を握られて先制点も奪われる苦しい展開となるも、後半の2ゴールで2-1と競り勝ち、世界に衝撃を与えた。そして迎えた今回の一戦では、完全アウェーで4-1と完勝し、再び驚きを提供したなか、金田氏は日本の変化について言及する。

「カタールW杯で日本はドイツに2-1と勝利したが、あの時の前半は日本側が圧倒的に劣勢で、『これは勝ち目がないわ』というぐらいの差があった。後半3バックへの大胆な変更で流れを引き寄せて勝利したが、いわば賭けのような采配であったし、両国の単純な実力差で言えば、まだまだ世界レベルは遠いという印象を当時抱いた。主導権をドイツに握られ、少ないチャンスをモノにするカウンターがハマった形で勝利を手にしたとはいえ、日本の課題が浮き彫りになった一戦でもあった。ところが今回の再戦では、日本が主導権を握るサッカーを体現していた」

 金田氏は、日本がドイツとがっぷり四つに組む展開で手にした勝利について収穫と断言。カタールW杯のリベンジを期した相手の撃破に大きな価値を見出している。

「今回、日本は4-2-3-1システムでスタートし、コンパクトな陣形で前からプレスをかけ、がっぷり四つに組む展開となったが、まったく引けを取らなかった。さらに後半には3バックもテストしており、そのなかでも互角の攻防を続け、勝利をもぎ取ったことに価値がある。当然ドイツも本気だ。ホームであり、日本に対してリベンジという気持ちもあったはずだが、そのなかで日本は正面からぶつかった結果、4-1で勝利したのは大きな成果だ」

 ドイツ戦を観戦するなかで思わず声を上げたという金田氏は、「僕の年代からすれば、ドイツに、しかも相手のホームで4-1と完勝するなんて夢にも思わなかったというか、本当に試合中は驚きの連続だった。試合は日本の深夜だったが思わず声も上げてしまったし、周りに迷惑をかけたかもしれないが、それぐらい興奮した」と率直な思いを明かした。

日本代表の2列目は激戦区「たとえば久保が先発でも不思議はない」

 ドイツに完勝した森保ジャパンの陣容について金田氏は「選手の質と層、両面が向上している」と評し、チーム力が底上げされている要因として熾烈な競争を挙げた。

「今の日本は、吉田麻也、酒井宏樹、長友佑都、大迫勇也らベテラン勢の不在をまったく感じさせない安定感と強さがある。1つのポジションで複数の選手が高い水準で激しく競争しているし、とりわけ2列目は激戦区だ」

 金田氏が指摘した2列目は、ドイツ戦の先発で左に三笘薫、中央に鎌田大地、右に伊東純也を配置し、後半から久保建英と堂安律が起用された。伊東が1ゴール1アシストと結果を残せば、久保も短い時間で2アシストと躍動。ハイレベルな先発争いは日本のストロングポイントと金田氏は強調する。

「久保からは、スタメンで出ると思っていたという発言もあったようだが、それぐらい競争が激しいということ。ベンチスタートだった久保と堂安は、2列目で言えばどこでも対応できるし、たとえば久保が先発でも不思議はない。三笘、鎌田、伊東、久保、堂安を含めて、全員がスタメン級の水準。それは日本の凄さであり、強みでもある。また、それぞれプレースタイルが異なるというのも素晴しい。対戦国の戦術や対峙する相手選手を見極めながら日本側の選手を入れ替えられるし、相手から見れば厄介の一言だろう。相手に狙いを定めさせない効果もあるし、それぐらい選択肢が多いのは監督にとっても喜ばしいことだ」

 切磋琢磨を続けながらチーム力の向上を図っている森保ジャパン。12日にはトルコ代表と対戦するなか、指揮官の起用法とポジション争いにも注目が集まる。

金田喜稔

かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。

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