J2リーグ終盤戦「J1昇格争い」展望 “トップ6進出”有力9クラブは?…混戦の上位勢力図を考察【コラム】

J2終盤戦を展望【写真:徳原隆元 & FCMZ】
J2終盤戦を展望【写真:徳原隆元 & FCMZ】

“魔境”と呼ばれるJ2リーグはシーズン終盤へ 勢力図、終盤戦を展望

“魔境”と呼ばれるJ2リーグも第31節まで終了し、シーズン終盤へと向かう。トラックレースに例えるなら第4コーナーを回って最後の直線に入ったところだ。上位争いを見ていく上で3つの基準がある。優勝、自動昇格、昇格プレーオフに参加できる“トップ6”だ。この基準から順を追ってJ2の勢力図、終盤戦の展望をしていきたい。

 ここまで首位を快走してきたFC町田ゼルビアだが、8月19日の3位清水エスパルス戦で2点リードからの逆転負けを喫した。清水側からすると、秋葉忠宏監督が「ディスイズ、ディスイズ、ディスイズフットボール!」と雄叫びを上げる劇的な勝利で、町田独走に待ったをかけた。この試合で負傷退場となった町田FWエリキはベンチに下がってからイエローカードをもらい次節は出場停止となったが、今季18得点の絶対的エースがどの程度で復帰できるのかは優勝&昇格争いに大きく関わるかもしれない。

 2位のジュビロ磐田は前々節の町田戦(アウェー)を1-2で落とし、リーグ戦12試合ぶりの敗戦を喫したが、前節は昇格のライバルであるヴァンフォーレ甲府に1-0で勝利。多くのチャンスを作りながら、MF遠藤保仁のコーナーキックからFWジャーメイン良がヘッドで合わせた1点止まりに。終盤は攻撃的なカードで猛攻に来た甲府を相手に苦しんだが、ディフェンス陣の粘りもありFWピーター・ウタカを擁する甲府に最後までゴールを割らせなかった。

 7試合ぶりのスタメンで殊勲のアシストを記録した43歳の遠藤は「自分たち次第で2位以上を確定できるので、先を見すぎるのも良くないですけど1試合1試合、勝ち点3が欲しい試合が続くので多少、近い順位の相手が気にはなりますけど、まずは自分たちがしっかり勝ち点を取りたい」と語る。

 磐田と清水にもチャンスはあるが、町田がJ2優勝に最も近いことに変わりはない。ここまで勝ち点63。1試合消化試合が少ない状況で、2位の磐田とは勝ち点6差、3位の清水とは勝ち点8差がある。4位の東京ヴェルディは町田と勝ち点10差の位置におり、実質13差。残りの試合数を逆転可能な勝ち点差と見積もれば、かなり奇跡的な猛追が必要となる。

 もう1つ町田が有利な理由として、すでに3クラブとの対戦を終えてしまったことがある。前節は清水に逆転負けを喫したが、ここから直接対決で差を詰められることはない。ただし、未消化の1試合がホームで0-1と敗れた12位ブラウブリッツ秋田とのアウェーゲームであることは踏まえておく必要がある。

 昨年まで青森山田高を指導し、高校サッカーの名将として知られた黒田剛監督が率いる町田はポゼッションにこだわらないが、ホームの秋田戦ではポゼッション率62パーセントとなり、秋田の厳しいディフェンスを崩せないまま、ロングスローの流れから決勝点を奪われた。相手のストロングを消し、ウィークを突く戦い方をする相手に苦戦する傾向はあり、7月に大雨の影響で中止となったこのカードが、どこにアサインされるかで状況は変わってくる。

14位ベガルタ仙台の“プレーオフ圏”入りに希望も?

 優勝争いが広めに見て町田、磐田、清水、東京Vの4つに絞られたとしても、J2で最大の注目はJ1昇格だ。自動昇格枠は2つ。2位の磐田が勝ち点57で、10差以内に付けているのは5位大分トリニータ、6位モンテディオ山形、7位V・ファーレン長崎、8位ザスパクサツ群馬、9位の甲府までとなっている。

 基本的には首位の町田を含めた9クラブに絞られたと見るのが妥当だ。その中で今最も勢いがあるのは6位の山形だ。シーズン途中にピーター・クラモフスキー前監督(現・FC東京)からコーチだった渡邉晋監督に交代。当初はなかなか勝ち点を取れなかったが、徐々に巻き返すと、首位の町田からMF高江麗央を補強。7月22日の長崎戦(第27節)で5-1の大勝を飾るなど、5連勝で一気に“トップ6”に食い込んできた。

 その山形は次節、“天空の城”ことGIONスタジアムに乗り込んで、首位の町田に挑む。1試合消化の少ない町田と勝ち点16差で、この試合に勝っても逆転優勝が現実的になるとは言い難いが、町田の独走をさらに止めると同時に、2位の磐田や3位の清水など、自動昇格の壁となる上位勢にプレッシャーをかけることになる。その町田にはホームで0-3の完敗を喫したが、2得点を奪ったエリキはいない。“古巣対戦”となる高江を軸に、好勝負に持ち込むことは十分に可能だろう。

 10位のファジアーノ岡山と11位のジェフユナイテッド千葉は2位磐田から勝ち点15差で、数字上はもちろん可能性を残すが、2位から9位まで7クラブの総崩れは考えにくく、残り11試合を全勝するぐらいのインパクトが必要になりそうだ。もっとも岡山は東京V、山形、磐田、群馬との対戦を残している。一方の千葉も次節に磐田とアウェーゲームを戦い、最終盤に東京V、群馬、長崎との対戦を残している。

 昇格プレーオフに参加資格のある3位~6位入りを基準に見ると、6位の山形が勝ち点47で、そこから勝ち点10差以内は長崎、群馬、甲府、岡山、千葉に加えて12位の秋田、そして勝ち点37で13位の藤枝MYFCまで。残り試合数=逆転可能な差という見方をすれば“トップ6”から勝ち点11差の14位ベガルタ仙台にも希望は残されている。伊藤彰前監督から堀孝史監督に交代した仙台はJ1浦和レッズから松崎快、さらに齋藤学、長澤和輝というJ1経験豊富な元代表クラスの選手を補強した。

 ここから11試合で奇跡的な“プレーオフ圏”入りを果たすには次節のアウェー大分戦をはじめ甲府、千葉、秋田、長崎、町田といった上位の相手を1つ1つ叩いていくしかない。もちろん下位から勝ち点を取りこぼすことは絶対に許されない状況だ。この仙台が昇格に望みをつないで行くと、最終節が町田戦であるため、優勝や自動昇格に関わる最後の大一番になる可能性もあり、ここからの仙台の戦いからは目が離せない。

上位進出が予想された徳島や熊本も絡む残留争いも熾烈に

 もう1つ気になるのは残留争いだ。2クラブがJ3に降格するが、現在はレノファ山口FCが勝ち点32で21位、大宮アルディージャが同26で最下位となっている。ただし、“トップ6”入りの可能性がある12位秋田や13位藤枝でも、降格圏から勝ち点5しか離れていない。昨シーズンはプレーオフで涙を飲んだロアッソ熊本が勝ち点34で17位、開幕前には昇格候補にも挙がっていた徳島ヴォルティスが同33で19位と苦しむが、昇格を目指す上位クラブにとって厄介な相手になってくるかもしれない。

 特に徳島はこれまで首位の町田と1勝1敗、2位の磐田にアウェーで勝利するなど、上位との対戦に強さを見せている。現在は厳しい残留争いを強いられているが、前回敗れた磐田をはじめ、ここから2巡目を戦うチームにとって難しい試合になってきそうだ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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