FC東京に確かな変化も…なぜ停滞気味の鹿島に敗戦? カメラマンが見た勝負の分かれ目

鹿島がFC東京相手に勝利【写真:徳原隆元】
鹿島がFC東京相手に勝利【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】FC東京対鹿島は見応えのある好ゲームに

 前半23分、先制を許した鹿島アントラーズは、反撃の狼煙となる同点弾を鈴木優磨が豪快なヘッドでFC東京ゴールへと突き刺した。ゴールへの歓喜は鋭い眼光となって表れ、チーム愛を示すように左胸のエンブレムに握った拳を強く押し当てた。

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 7月も中旬を過ぎ夏場での試合へと突入したJ1リーグ。第21節FC東京対鹿島戦も消耗戦となり低調な内容となることも懸念されたが、両チームの選手たちが激しく戦う姿勢を前面に出したことにより、見応えのある好ゲームとなった。

 ピーター・クラモフスキーがFC東京の監督に就任したことによってもたらされた変化は、攻撃へのスピードアップと対人プレーの強度が増したことだ。

 スピードある攻撃への意識は、FC東京ゴール側でボールがラインを割りリスタートとなった際にも見られた。GKヤクブ・スウォビィクはゲームをサポートするボールボーイからボールを受け取ると、すぐに反撃に出ようと味方選手の位置を確かめボールをつないでいた。

 その素早さは、これまで以上に相手の守備体系が整う前に、より前線にボールを運ぼうとする意識が高くなっていることを証明していた。チーム全体でもゴールへと向かう姿勢は強まり、時間をかけず縦にボールを運ぶプレーが体現されており攻撃にスピード感が増した印象を受ける。

 反対に守備に回った際には、ボールを持った相手選手への寄せがこれまで以上に厳しくなり、小手先の上手さで勝負するのではなく、しっかりと戦えるチームとしての逞しさを持った集団へと変貌していく過程にあるようだ。

 対して鹿島は開幕当初の迷走から5月14日の対名古屋グランパス戦で、スタイルを従来のカウンター攻撃へと戻し復調へと向かったが、ここにきてチーム状態は直近のリーグ戦で3試合勝利がなく、12日に行われた天皇杯でもヴァンフォーレ甲府に敗れるなど停滞気味だった。

 しかし、結果的にFC東京のタフな戦い方と真っ向勝負することで、鹿島の選手たちが持つ本来の力強さが戻り、漂っていた停滞感を吹き飛ばす内容を見せることになる。

監督の采配を超えた両チーム選手たちの頑張りが3万超の観客を沸かす

 その両チームの果敢な戦いぶりはさまざまな形で表現された。ある局面では、まさに打ち合うという言葉どおりにショートパスの連続で、相手守備網への切り崩しが行われた。攻撃側のボールをインターセプトすると、その奪った側も相手がそういう手で来るならこちらも同じ方法でと言わんばかりに、ショートパスで局面を打開しようと競うようにプレーしていた。

 そうした狭い範囲でパスの応酬が見られたかと思うと、前線の選手は個人の馬力にモノを言わせた力強いドリブルで相手守備網に挑んでいく。守る側も豪快なドリブル突破に対して二重、三重の守備網を敷いて対応するなど、体力の消耗が激しい環境下にあって、お互いに長所を出し合うプレーで勝敗を決しようとする選手たちの姿は実に逞しかった。

 ただ、さすがに後半30分を過ぎたあたりからペースダウンすることになる。それでも全体的な内容は監督の采配を超えた両チームの選手たちの頑張りが、3万7014人の観客を沸かす好ゲームを支えたと言える。

 そうしたなかで鹿島の選手たちは手慣れたカウンターで攻撃を仕掛け、気迫の部分でも鈴木が同点弾の際に見せた鋭い眼光に表れていたように、FC東京を上回り勝利を手にすることになる。なにより鹿島の攻撃の鋭さと力強さは記録された3ゴールに集約されていた。

 逆転弾となった垣田裕暉の一撃はサイドバックの安西幸輝の攻め上がりが出発点となっており、3点目のディエゴ・ピトゥカの目の覚めるような強シュートも、スピードに乗った波状攻撃から生まれた得点だった。

 選手個人の激しく戦う姿勢が勝敗を決定するただ1つの要素ではないが、中断期間を経て夏本番となる今後の試合は、肉体的にも精神的にもタフさが必要となる。90分間のすべてでダイナミックなプレーを見せるのは難しいだろうが、この試合のように両チームの選手たちが見せた積極的な戦う姿勢は、夏場を乗り切る原動力となることは間違いない。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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