“点”での勝負に見ごたえ “ビッグ神奈川ダービー”に決着をつけた伏兵・車屋紳太郎の殊勲のプレー

横浜FW戦で殊勲のヒーローとなった車屋紳太郎【写真:徳原隆元】
横浜FW戦で殊勲のヒーローとなった車屋紳太郎【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】首位・横浜FMからの勝ち点3はこれからの巻き返しに直結か

「ビッグ神奈川ダービー」と銘打たれたJ1リーグ第21節、横浜F・マリノス対川崎フロンターレの一戦は劇的な幕切れでの決着となった。後半アディショナルタイム4分、川崎DFの車屋紳太郎がこの試合で唯一のゴールをマークし、チームを勝利へと導いた。

 ヒーローインタビューを終え、1人遅れてサポーターが待つスタンドへと向かう車屋に、カメラのファインダーを覗きながら「アンデルソン・ロペスとのバトルは疲れたでしょう」と話しかけると、うん、うんと頷き、大仕事をやり遂げた勝利の立役者としては小さな笑顔を作った。

 前半の試合展開は互角だった。両チームともサイド攻撃を軸に敵陣へと進出し、中央にラストパスを送る展開でゴールを目指していく。しかし、ボールをゴール前へと運ぶスタイルは異なっていた。

 川崎は右サイドのMF家長昭博を中心にロングパスとダイレクトのショートパスを効果的に織り交ぜた攻撃で横浜守備網を崩しにかかる。対する横浜は自慢のブラジル人両ウイングの突破を武器とした鋭いカウンター攻撃からチャンスを作っていった。

 ゴール裏からカメラのファインダーを通して見る攻防は、あとはラストパスにどちらが“点”で合わせられるかが勝負だと感じた。サイドからパスが出されれば、ゴール前へと望遠レンズを装着したカメラを振って走り込む選手を追った。

 そうしたゴール前へと迫る選手をカメラのファインダーに捉えていくなかで、目に留まったのが川崎の守備だった。横浜の鋭利なカウンターを繰り出す前線のブラジル人カルテットの攻撃を激しいマークで封じていく。

集中した守備で横浜FMの強力攻撃陣をシャットアウト【写真:徳原隆元】
集中した守備で横浜FMの強力攻撃陣をシャットアウト【写真:徳原隆元】

 後半に入ると横浜はA・ロペスをサポートするように、中盤のMFマルコス・ジュニオールがより前線に近い位置でプレーし川崎ゴールへと迫った。さらにGK一森純が後半28分のPKを阻止するとサポーターも大いに沸き、試合は横浜ペースへと傾いていった。

 だが、川崎はボールを支配され、ピンチの場面もあったが横浜の選手に激しいマークで食らい付き、攻撃スピードを鈍らせて最終局面だけは破らせない。結果的に車屋やDF山根視来、それにボランチのMFジョアン・シミッチらの守備陣は横浜の強力な攻撃に対して、最後までゴールを守り切ったのだった。もし、試合が0-0の引き分けで終わっていたとしても、劣勢の展開をしのいだ川崎DF陣の奮闘は高評価を得ていただろう。

 そうしたなかで川崎DF陣の活躍は、本分の守備だけにとどまることはなかった。川崎の試合終了のホイッスルが鳴るまで勝利を目指す姿勢は、彼らDF陣の攻撃参加に表れる。そして、最後の最後にきてゴール前でDF大南拓磨のパスに“点”で合わせたのは、攻撃の選手ではなくDFの車屋だった。

 試合後、円陣を組んで喜びを爆発させた川崎の選手たち。首位・横浜FMからの勝ち点「3」奪取は今後のリーグ上昇に向けてチームに勢いを付ける勝利となった。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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