U-17日本代表、アジア杯で「株を上げた10人」 攻守で多士済々“06ジャパン”の有望株

U-17アジアカップを制した日本代表【写真:2023 Asian Football Confederation (AFC)】
U-17アジアカップを制した日本代表【写真:2023 Asian Football Confederation (AFC)】

【識者コラム】U-17アジアカップで大会連覇、インパクトを残した日本のタレントに注目

 タイで行われたU-17アジアカップで日本代表は決勝でU-17韓国代表を3-0と快勝。コロナ禍で中止となった前回を挟み、史上初の大会連覇を果たした。準々決勝でU-17オーストラリア代表を破り、すでに11月のU-17ワールドカップ(W杯)行きを決めていたが、森山佳郎監督と“06ジャパン”のメンバーは大会前から「アジア王者として世界へ」を目標に掲げており、その目標をしっかりと果たした形だ。

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 今回は日本の課題であるFWの得点力が国際舞台で示された大会でもあった。エースとして期待された道脇豊(ロアッソ熊本)が高さとスピードの両方を発揮し、決勝戦のゴールを含む4得点を記録すれば、相棒の名和田我空(神村学園高)は抜け目ない動き出しや鮮やかな右足のフリーキックを武器に、大会得点王となる5ゴールを挙げるなど、優勝の立役者となった。

 もう1人のFWである高岡伶颯(日章学園高)はオーストラリア戦で道脇、名和田と揃い踏みとなる得点を決めただけでなく、多くの得点に絡む活躍でチームの攻撃を支えた。道脇、名和田、高岡の3人は九州で育った選手たちであり、大迫勇也(ヴィッセル神戸)などに代表される“九州産ストライカー”のブランドをさらに高める結果となった。

 彼らFW陣に負けず劣らずインパクトを残したのがMF望月耕平(横浜F・マリノスユース)だ。1-1と引き分けたグループ1試合目のU-17ウズベキスタン代表戦、準々決勝のオーストラリア戦は出番がなかったが、出場チャンスをもらった4試合で輝きを放ち、右サイドハーフと2トップで起用されながら、4得点を挙げた。決勝はゴールこそなかったが、名和田によるチームの2点目をお膳立てするなど、チャンスメイカーとしての存在感も際立っていた。

 チャンスメイクと言えば、10番を背負う佐藤龍之介(FC東京U-18)の活躍も見逃せない。4-0で勝利した2試合目のU-17ベトナム代表戦では日本の鮮やかなパスワークから、絶好のクロスで道脇による先制弾をアシスト。世界行きを決めたU-17オーストリア代表戦では2点リードから相手の反撃に遭い、苦しくなった時間帯に見事なラストパスで高岡のゴールを演出した。さらに決勝では後半アディショナルタイムに道脇のゴールをアシストしている。

 そのほか、右サイドバックをタイミングよく攻め上がりながらクロスや時にはロングスローで多くのゴールを演出した柴田翔太郎(川崎フロンターレU-18)は存在感があり、ボランチから抜群の攻撃センスでフィニッシュに関わり準決勝のイラン戦では日本をファイナルに導く先制ゴールを挙げた矢田龍之介(清水エスパルスユース)、オーストラリア戦で道脇のゴールをアシストするなど、左サイドをスピードで切り裂いた吉永夢希(神村学園)の働きも見逃せない。

今大会のメンバーが4か月後のU-17W杯でベースに、新戦力の台頭にも期待

 6試合で22得点を記録した日本のオフェンスというのは未来が明るい。その一方で、守備面での粘り強さ、したたかさも高温多湿の厳しい環境で、渋い輝きを見せた。特に左サイドバックの主力を担ったキャプテンの小杉啓太(湘南ベルマーレU-18)は1対1の守備で驚異的なデュエルの強さを示しだだけでなく、森山監督も全福の信頼を置くコーチングや幅広いカバーリングで支えた。中盤で攻守のバランスを取りながら、ビルドアップの軸としても稼働した山本丈偉(東京ヴェルディユース)などのバランスワークがあったからこそ、FW陣を中心に多くの得点が生まれたとも言える。

 この大会を通して確かな成長を遂げた選手たちは自チームに戻り、クラブユースや高校、選手によってはJリーグの舞台で飛躍を目指す。道脇は高校2年生ながら、すでにプロ選手として熊本で多くの試合に出ているが、FC東京の佐藤や清水の矢田など、ルヴァン杯や天皇杯でトップチームの試合を経験した選手たちもいる。川崎の柴田も今年中のトップデビューを誓っており、頼れるキャプテンの小杉にしても、最下位に苦しむ湘南で救世主的な存在になり得るポテンシャルを備えている。

 今回のアジアカップを制覇したメンバーが、4か月後のU-17W杯でベースになることは間違いないが、森山監督は実績で聖域を作る指導者ではない。本来の常連メンバーでありながら、怪我で選外となった徳田誉(鹿島アントラーズユース)や今回はメンバーに絡めなかった同世代の選手たちにも、今後の成長や活躍次第で世界行きのチャンスはあるはずだ。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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