森保ジャパン、6月招集メンバー「序列考察」 2戦先発の5人が一歩リード…三笘&板倉は“攻守の大黒柱”
【識者コラム】4-1-4-1で戦った6月の招集メンバーに限定して序列を整理
第2次森保ジャパン発足後、2度目の活動となった6月シリーズで日本代表は、エルサルバドル代表に6-0、ペルー代表に4-1で快勝し2連勝。10得点1失点という文句のつけどころがない結果に終わった。特に韓国代表に1-0で勝利したペルーを相手に、苦しい時間帯がありながらもチャンスを決め切って勝利した2試合目は強度が高かった。局面のクオリティーで課題は見せつつも、カタール・ワールドカップ(W杯)までのサイクルよりも個人、組織ともに格段のパワーアップを感じさせる。
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この6月シリーズは前回の3月シリーズでの活動と合わせて、すでにドイツ代表との対戦が決まっている9月の欧州遠征に向けたサバイバルの意味合いが強い。4-2-3-1で戦った3月シリーズに招集されつつも、6月シリーズでは招集外となったメンバーの評価は難しいが、今回は2試合とも4-1-4-1で戦った6月のメンバーに限定して、現段階の序列を整理してみたい。
今回の2試合では、エルサルバドル戦を前に離脱した川村拓夢(サンフレッチェ広島)、負傷明けだった川﨑颯太(京都サンガS.C.)、GKで唯一出番のなかったシュミット・ダニエル(シント=トロイデン)を除く24人の選手が出場した。そのなかでも2試合とも先発出場した三笘薫(ブライトン)、板倉滉(ボルシアMG)、谷口彰悟(アル・ラーヤン)、菅原由勢(AZ)、旗手怜央(セルティック)の5人は各ポジションの一番手と見るべきだろう。
旗手に関しては3月シリーズで招集外だったこともあり、あくまで4-1-4-1での評価になるが、このシステムを使う場合は左インサイドハーフのファーストチョイスであると見て間違いない。明白になったのはディフェンスでは板倉、オフェンスでは三笘という2本の大黒柱だ。板倉とともにセンターバックでフル出場した谷口は北中米W杯の大会中に35歳となる。冨安健洋(アーセナル)が現在、怪我で離脱中ということも考慮に入れる必要はあるが、少なくとも来年1月のアジアカップを主力として迎える可能性は十分にありそうだ。
エルサルバドル戦とペルー戦では6つのポジションでスタメンが入れ替わったが、基本的に前者のほうがよりテストの色合いは強い。やはり2試合目のペルー戦のほうが高強度の試合になることは想定できたので、ペルー戦のスタメンをファーストチョイスとして考えるのが妥当だ。ただ、アンカーの守田英正(スポルティング)と遠藤航(シュツットガルト)、右インサイドハーフの堂安律(フライブルク)と鎌田大地(フランクフルト)、右サイドの久保建英(レアル・ソシエダ)と伊東純也(スタッド・ランス)はそれぞれの良さがあり、単純な序列づけは難しい。
3バックの左が主戦場の伊藤は、左SBとしてまずまず機能
この3ポジションは個人だけでなくユニットで見ていくべきものでもある。アンカーであれば守田は中盤の底で相手のプレッシャーをいなして、インサイドハーフの旗手や堂安を前向きにプレーさせることができる。一方の遠藤は“デュエル王”らしい守備で圧倒的な存在感を出せるが、攻撃面では鎌田と旗手の助けを受けながら、むしろ前に出ていくことで伊藤洋輝(シュツットガルト)のゴールをアシストするなど、特長を出していた。
右のアウトサイドは左利きの久保だと堂安、菅原との絡みが面白く、中央に流れる動きも含めて多彩な絡み方ができるので、左の三笘と非対称の関係で相手ディフェンスを惑わすことができる。伊東だと基本は単騎で縦に仕掛けるので、三笘とは“左右の槍”のような関係になるが、ベルギーのヘンク時代から磨いたオフでゴール前に入っていく動きはもう1つの特長で、三笘が左で仕掛ければ、必ずと言っていいほどファーサイドから飛び込んでフィニッシュに迫力を出していた。
右インサイドハーフの堂安と鎌田にしても、周りとの組み合わせを考えた起用法だったように思う。堂安は高い位置で久保と絡みながら、1トップの上田綺世(セルクル・ブルージュ)を孤立させない距離感での連続性のあるプレーが目を引いた。鎌田は守備で前目のポジションを取るが、攻撃では少し引いた位置から遠藤を追い越させたり、伊東に前向きにボールを持たせたり、正確なサイドチェンジで左の三笘を生かしたりと、より司令塔の役割を果たした。
左サイドバック(SB)はセンターバック(CB)の候補でもある伊藤の位置付けが難しいが、ペルー戦では3バックの左を得意とする彼らしい特長を出して、エルサルバドル戦でスタメンだった森下龍矢(名古屋グランパス)とも差別化していた。CBで勝負したい気持ちはあるだろうが、三笘との関係も含めて、ペルー戦のように機能するなら代表では引き続き左SBがメインになっていく可能性もある。
1トップはエルサルバドル戦でPKから待望の代表初ゴールを決めた上田が怪我で離脱したこともあり、ペルー戦でスタメン起用された古橋との序列は非常に掴みにくい。古橋もエルサルバドル戦では相馬勇紀(カーザ・ピア)のクロスから見事なゴールを決めたが、ペルー戦は面白い動きはしていたもののゴールを決められず、三笘と伊東のチャンスメイクに応じたフィニッシュというところも課題が見られた。ただ、これまでの活動にはないフィットを見せたことで、旗手とともに9月のシリーズでも引き続き招集される可能性は高まったと言える。
6月シリーズで出番のなかったシュミットの序列は…
GKは大迫敬介(サンフレッチェ広島)と中村航輔(ポルティモネンセ)にチャンスが与えられ、それぞれ評価を高めたはず。ただ、今回は出番がなかったシュミットの序列が下がったとは言い難い。やはり1つしかないポジションなので、むしろ森保一監督が3月シリーズで出番のなかった大迫、久々の復帰となった中村にチャンスを与えたというのはカタールW杯に向けたサイクルではあまりなかった画期的な起用法で、前向きに捉えたい。これまでのシュミットのパフォーマンスと今回の2試合での2人のパフォーマンスを評価して、9月以降の活動に反映すると見るべきだ。
今回トライした4-1-4-1でおおよそ1、2番手の序列は想定できるが、オプションということでは川辺駿(ウォルバーハンプトン)のインサイドハーフや追加招集となった伊藤敦樹(浦和レッズ)のアンカーなど、今回ファーストチョイスにしたメンバーにもない特長が見られた起用もあった。久保と堂安についてはペルー戦の終盤からエルサルバドル戦と逆に、堂安がアウトサイド、久保がインサイドでテストされたのも興味深い。
そして布陣ではCBに入れた瀬古歩夢(グラスホッパー)はペルー戦でアンカーに投入されており、相手がパワープレー気味に来た時に、CBの手前で跳ね返せて、かつカウンターパスを供給できるチョイスということで、9月の欧州遠征というより来年のアジアカップで使えるかもしれない。また練習で見られた前田大然(セルティック)の左サイドハーフ、相馬の左SBも試合でトライして欲しかったが、今後の活動で見られる期待はある。
最後に今回はコンディション不良で離脱となってしまった川村は引き続き広島で良いパフォーマンスを続けて、また招集されるように頑張ってもらいたい。それは右膝の怪我から回復中の田中碧(デュッセルドルフ)はもちろん、3月シリーズで招集されたものの、今回の6月シリーズではメンバー外になった町野修斗(湘南ベルマーレ)や西村拓真(横浜F・マリノス)などにも言えることだ。川﨑の場合はA代表の再招集はもちろんだが、パリ五輪のアジア予選がスタートする大岩剛監督の代表チームで3月に招集された半田陸(ガンバ大阪)やバングーナガンデ佳史扶(FC東京)とともに、主力として五輪の切符を勝ち取って欲しい思いが強い。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。