今シーズン欧州日本人の通信簿・番外編 「5大リーグでも飛躍できるポテンシャル十分」な左サイドアタッカーは?

欧州5大リーグでも活躍が期待できる選手たち【写真:Getty Images】
欧州5大リーグでも活躍が期待できる選手たち【写真:Getty Images】

【識者コラム】去就注目のFW中村、日本代表で期待のSB菅原は最高「S」評価に

 ヨーロッパで活躍する日本人選手は、今シーズンもそれぞれのクラブで成長を遂げている。「FOOTBALL ZONE」では、欧州でプレーする選手たちを「海外組通信簿」と題し特集を展開。今回は「番外編」と称し、脚光の当たりにくい選手たちにスポットを当て、それぞれのシーズン評価を展開していく。(文=河治良幸)

   ◇   ◇   ◇

 【評価指標】
S=抜群の出来
A=上出来
B=まずまずの出来
C=可もなく不可もなく
D=期待外れ

■FW 中村敬斗(LASKリンツ/オーストリア) 評価:S

 4-2-3-1の左サイドからオーストリアリーグで14得点、公式戦は17得点だった。カットインからのシュートはもちろん、オフでニアゾーンに走り込んで、味方のラストパスに合わせるなど、フィニッシュの形も豊富だった。アシストもカップ戦と合わせて8つを記録。絶対王者のザルツブルクには水を開けられたが、3位フィニッシュしたLASKリンツの大半のゴールに絡んだ。すでに複数クラブからの関心がニュースに飛び交っているが、特長を生かせる環境であれば5大リーグでも飛躍できるポテンシャルは十分ある。

■FW 斉藤光毅(スパルタ・ロッテルダム/オランダ) 評価:A

 インパクトという意味では欧州日本人の中でもトップレベルだ。ベルギー2部のロンメルからオランダに環境を移し、難しいチャレンジだったはずだが、4-3-3のウイングでスタメンに定着。7得点はもちろん、5アシストなどチャンスメークも光った。得意のドリブルに加えて、動き出しに大きな成長が感じられる。パリ五輪を目指すU-22代表では絶対的なエースだが、欧州カンファレンスリーグをかけたプレーオフを優先。しかし、決勝で惜しくも逃した。スパルタでのレンタル延長が濃厚と伝えられるが、モーリス・スタイン監督は手腕を評価されて次期アヤックス監督に。“愛弟子”である斉藤の動向も注目される。

■DF 菅原由勢(AZアルクマール/オランダ) 評価:S

 右サイドバックのポジションから3得点8アシストという数字を残したが、攻守にわたる存在感も特別だった。サイドアタッカーにタレントの多いオランダにおいて、1対1の守備でほとんど負けずに、裏返しでチャンスに絡む姿は頼もしい。トップ昇格した名古屋グランパスからAZにやってきて4年間。大きな成長をしてきたもう1つの愛するクラブになっているようだが、何か環境の変化を起こすタイミングというのは意識しているようだ。

6月の日本代表メンバー入りの川辺、相馬はそれぞれ成長

■MF 川辺駿(グラスホッパー/スイス) 評価:A

 英国ビザの関係もあり、長期契約を結ぶイングランド1部ウォルバーハンプトンからレンタル延長となったシーズン。川辺はさらなる躍動を見せた。中盤から9得点6アシスト。日本人選手にあまりないボックス・トゥ・ボックスの上下動は質も量もアップしており、サンフレッチェ広島時代から磨いてきた“一本のパス”も、裏抜けを得意とするアタッカー陣を生かす流れでさらに研ぎ澄まされた。加入当初は60分ぐらいで足がつったという体力面も、フルタイムで現地の強度に耐えられるようになったという。

■MF 橋本拳人(ウエスカ/スペイン) 評価:B

 2部とは言ってもスペインの環境に根を下ろして、ボランチとして33試合に出場したのは立派だ。ちょっと残念だったのは終盤戦に差し掛かったタイミングの離脱だ。7試合に欠場したが、その間にウエスカは1勝3分3敗と勝ち点を伸ばせなかった。パフォーマンスとしては本来の持ち味である縦の攻め上がりからシュートを決めるシーンは欲しかったが、チーム内評価は上々のようだ。当初1年間だったが、契約延長に前向きな報道も出ている。ただ、日本代表に復帰することを基準にした場合、30歳になるタイミングでこのままスペイン2部にとどまるべきか意見は分かれるところかもしれない。

■FW 相馬勇紀(カーザ・ピア/ポルトガル) 評価:B

 ポルトガルでの充実感が、日本代表に招集されたこととリンクしている。加入当初は途中出場がメインだったが、左シャドー(ウイング)でスタメンに定着し、ラスト3試合は右シャドーに。目に見えるゴールやアシストは物足りない数字かもしれないが、1対1の強さは名古屋時代よりアップした印象を受ける。また相馬自身の手応えとして、シャドーを経験することで、アウトサイドよりクロスのバリエーションが増えており、ただ走り込む味方に合わせるだけでなく、ディフェンスの逆を突いたり、間に落とすボールも蹴るようになったという。日本代表ではサイドバックにもトライするが、欧州2年目は大きな飛躍を遂げるべき楽しみなシーズンになりそうだ。

(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)



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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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