J2でブレイク期待の「ヤングタレント5人」 23歳FWが柏→徳島入りで覚醒、“鎌田大地の弟”も要チェックの逸材
【識者コラム】J1昇格を目指すクラブの中からヤングタレント5人を厳選
シーズン序盤戦を終え、さらに白熱しそうな気配が漂う“魔境”J2。ここではJ1昇格を目指すクラブの中から、すでに主力を担うヤングタレント5人を厳選した。パリ五輪世代の選手はもちろん、ギリギリでオーバーエイジとなる2000年生まれの選手も対象に、さらなるブレイクが期待できる選手たちをピックアップした。
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■鈴木海音(DF/ジュビロ磐田/20歳)
今季リーグ成績:13試合1得点
パリ五輪を目指すU-22日本代表のメンバーでもあり、磐田のディフェンスラインを力強く支える。一番の武器はインターセプトで、空中戦もうしろで跳ね返すというより、相手FWを制しながら前向きなヘッドパスを送る形で、何度もゴールの起点となっている。昨年は期限付き移籍した栃木SCで大きく成長。リーダーシップや主体的なビルドアップも身に付けた。開幕戦はベンチ入りも出番がなく序盤戦はベンチ外の試合もあったが、腐ることなくルヴァン杯から横内昭展監督にアピールを続けて、センターバックの主力を勝ち取った。3月のU-22代表の欧州遠征では人に対する強さやチャレンジといった課題を見つけて、磐田でのパフォーマンスに還元しており、今月の欧州遠征でさらなる成長が期待される。
■森 海渡(FW/徳島ヴォルティス/23歳)
今季リーグ成績:14試合7得点
ここまで7得点。クラブの“生ける伝説”であり、6得点をマークしている柿谷曜一朗との2トップはJ2最強と言っても過言ではない。柏レイソルからの期限付き移籍だが、かつてセレッソ大阪からやってきた若き日の柿谷がそうであったように、徳島の温かいサポーターに見守られながら、環境に馴染んでいるように見える。筑波大からの卒業を待たず、柏に加入するなど飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、1つ歳下の細谷真大らを擁する層の厚い前線で主力を勝ち取れず、成長を求めて徳島に来た。最下位で迎えたジュビロ磐田戦(第12節)で初得点を挙げると、大宮アルディージャ戦(第14節)、ツエーゲン金沢戦(第16節)で2得点など大暴れ。特に首位FC·町田ゼルビア戦(第18節)で、柿谷と“アベック弾”で勝利をもたらしたゴールは見事だった。パリ五輪世代より1年だけオーバーエイジの大型FWが下位から奇跡的な昇格劇の主役になり得るタレントだ。
ヴェルディの下部組織出身MFは「今最も注目したい守備的タレント」
■平河 悠(FW/FC町田ゼルビア/22歳)
今季リーグ成績:18試合4得点
4-4-2の右サイドハーフながら、すでに4得点。チャンスメイカーとしての能力も高く、2アシストを記録している。今シーズンのJ2で最も注目すべきパリ五輪世代のタレントの1人であり、U-22日本代表の欧州遠征にもようやく招集された。徳島戦でまさかの警告2枚による退場となり、代表で離れる前のジェフユナイテッド千葉戦は欠場となってしまったが、それまで全試合にスタメン起用されており、黒田剛監督や金明輝コーチの戦術的な要求に応えながら、右サイドからの高速ドリブルやフィニッシュに絡む抜け目ない動きなど、スペシャリティーも見せている。大卒ルーキーだが、特別指定選手として2年間プレーしており、町田から世界に駆け上がっていく資質は十分だ。
■鎌田大夢(MF/ベガルタ仙台/21歳)
今季リーグ成績:13試合1得点
中盤からテクニカルな組み立てと持ち上がり、決定的な縦パスなどで存在感を際立たせている。伊藤彰監督は可変性の高いスタイルで、ボランチにはとりわけ高いタスクを求めるが、それを難なくこなすばかりか、個性も上乗せして仙台の攻撃リズムを生み出している。名前から分かるとおり、日本代表の主力である鎌田大地(フランクフルト)の弟だが、決してエリートではない。昌平高からJ3の福島ユナイテッドFCに加入して、叩き上げで仙台の主力まで上り詰めた。しかし、本当の飛躍はここからかもしれない。兄のような恵まれたサイズはないが、その分、クイックネスと小気味良さがある。仙台のJ1昇格、さらには兄と日の丸での共演があるか。パリ五輪世代でもあり、大岩剛監督も要チェックのタレントだ。
■綱島悠斗(MF/東京ヴェルディ/22歳)
今季リーグ成績:15試合1得点
アカデミー育ちだが、国士舘大学から加入した。いわゆる“大卒ルーキー”だが、J1も含めて、今最も注目したい守備的なタレントの1人と言える。開幕時はベンチ外だったが、第4節の徳島ヴォルティス戦で後半44分から初出場。インサイドハーフのポジションで、念願の初スタメンとなった第9節のブラウブリッツ秋田戦で初ゴールを決めた。188センチの体格を生かした豪快なボール奪取は言わずもがな、ヴェルディの下部組織仕込みのボール捌きと狙い澄ましたロングパスが光る。ここ数試合はアンカー、さらにはセンターバックのポジションで印象的なプレーを見せており、アンダーカテゴリーの代表を率いたこともある城福浩監督の下で、悲願のJ1昇格を目指しながらどう成長していくか非常に楽しみだ。
(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。