「誰が見てもゴール」 J2町田×秋田の“得点見逃し”、審判員が「的確な判定」のためにすべきことは?

JFA審判委員会がレフェリーブリーフィングを実施写真はイメージです)【写真:高橋 学】
JFA審判委員会がレフェリーブリーフィングを実施写真はイメージです)【写真:高橋 学】

JFA審判委員会がレフェリーブリーフィングを実施

 日本サッカー協会(JFA)の審判委員会は、4月26日にオンラインでレフェリーブリーフィングを実施。いつかの事例を取り上げるなかで、大きな話題になった4月8日に行われたJ2リーグ第8節の町田ゼルビア対ブラウブリッツ秋田戦について触れられた。

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 この試合の前半8分、秋田のFW青木翔大がハーフウェーライン近くからロングシュート。これを町田のGKポープ・ウィリアムが手に当て、ボールがゴール内に入ったかと思われる状況からウィリアムが弾き出していた。試合の中継映像などからは明らかにゴールラインを割ったように見えた。扇谷健司委員長は「得点を認めるべきだったものが認められなかった」と、本来ではゴールインとされるべきものだったと話した。

 JFA審判マネジャー・リーグ担当統括の東城穣氏は「真摯に受け止めて向き合わないといけない。審判員として何ができるのか、難しいなかでも的確な判定をするため、確率を上げるためにいろいろと審判員とも話をした」と、その内容を紹介している。

「副審としてはゴールライン上で真横から見たい。たとえ状況として物理的に無理でも、ゴールラインに近づきたいからトップスピードで向かおうとする。そうなれば動体視力が低下し、視野も狭くなる。副審の心理としてはそうなるし、このゲームでもそのような動きになった。ゴールラインに間に合わない時、『絶対無理、判断できない』ではなく、GKとの位置関係、DFやGKの身体がどれだけゴール内に入っているか、そのようなことが見極められれば的確な判定につながる確率が上がる。そのため、走るスピードを緩めるオプション、意識を持つことも必要」

 そのうえで「『だろう』や推測で判定しようということではなく、1つの要素として身体の位置が今回ならゴールラインの向こう側に寝ていて、その手の先にボールがあれば判断できる可能性が高まる」と話す。この場面でいくと、地面についたウィリアムの上半身はゴールラインを越えたゴール内にあるため、手の位置は自然とゴール内になる。そうした状況を複合的に見て、論理的な推定をすることが正確な判定につながるという説明だった。

VARのあった広島×札幌の誤審とは「置かれている状況が違う」

 また、この場面ではボールの転がった方向が、副審から見てGKの身体の向こう側にいっていることも判断を難しくした要素の1つになった。東城氏は「4人のうち誰かが事実をしっかり掴めていれば、得点は認められる」と、手前側のタッチライン中央近くを基本の位置にして、ベンチコントロールや交代の補助も役割に含まれる第4審判のサポートが的確な判定につながる場合があることを示し、「ゲームに参加していく意識を持つ」という指導をしていることも話した。

 先月にはJ1のサンフレッチェ広島と北海道コンサドーレ札幌の試合でボールがゴールラインを越えたのにもかかわらず、ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)も含めてゴールを認められなかった事象があった。今回はVARのないJ2でのゲームであり、扇谷委員長は「広島と札幌の試合はVARで確認できるものをできなかった。今回とは状況が違うと思っている。誤審の定義は分からないが、審判員が置かれている状況が前回と今回では違うと認識している」とコメント。その一方で、「秋田には連絡をさせていただいた。映像上、誰が見てもゴールというものだったので」と、コミュニケーションを取ったことも明かしていた。

 さらに大きな視点で言えばJ2にもVARを導入することや、より簡易的なVARライトというシステムが世界的にも導入される方向に進んでいるところもあるが、東城氏は「与えられた環境の中で少しでも的確な判定につなげるために、フィールド上の審判員としてできることを常に考え、それに対して最大限のベストを尽くす」と、現時点で審判員の立場からできることの精度を高めると話していた。

(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)



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