セルティック行きがメインの理由? 森保監督が訪欧しなければいけない事情と現状

森保一監督が欧州視察に出発【写真:Getty Images】
森保一監督が欧州視察に出発【写真:Getty Images】

【識者コラム】森保監督はセルティックのポステコグルー監督との対話を希望か

 日本代表の森保一監督が4月14日、ヨーロッパに出発した。前日には名波浩コーチ、前田遼一コーチも現地に飛んでおり、3人で手分けする形で視察を行う。

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 森保監督はこの視察の目的を「日本人選手の活躍を見る」「ヨーロッパでいろいろな戦術や監督のやることを学ぶ」「他国の選手(の情報)をインプットする」「世界トップ基準を確認する」と語っており、5月半ばまで約1か月の滞在を予定している。

 だが、5月初旬の日本はゴールデンウィークで試合がたて込む。また5月6日にはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の決勝第2戦が埼玉スタジアムで開催される。6月の国際親善試合に向けた国内選手の発掘にも適した時期だ。それでも森保監督にはヨーロッパに旅立たなければならない理由があるのだろう。それは何か。

 スコットランド1部セルティックのアンジェ・ポステコグルー監督に会いに行くのではないか。古橋亨梧や旗手怜央は好調にもかかわらず日本代表に招集されない。そのことについて、ポステコグルー監督が森保監督と話がしたいと語っていたという報道があった。前田大然も所属するチームの監督にヘソを曲げられたら代表活動に影響が出る。だから慌てて会いに行くのではないか。

「ポステコグルー監督が話をしたいと言っているようだが」と聞かれた森保監督は、笑顔になって「みなさんが言うほどケンカ腰で話に来いということではなく、セルティックに来るのであればいつでもウェルカムだよ」というニュアンスの発言だったと説明した。そして、古橋については「いつでも日本代表の戦力としてプレーできるだけの価値がある選手」と評価した。

 森保監督がポステコグルー監督に会うかどうかは別にして、この日出発した大きな理由はヨーロッパのスケジュールだ。ヨーロッパのシーズンはおおむね5月半ばに終わるため、その終盤戦およびUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、ヨーロッパリーグ(EL)などを見ようと思うなら、今出発しなければならない。この1か月を逃すとヨーロッパ組の視察は秋近くにならないとできない。

 そして、そのスケジュールを重視しなければいけない要素が森保監督にある。

訪問予定の国はドイツ、ポルトガル、スペイン、イングランド、ベルギー、オランダ

 それは、日本代表がヨーロッパ組依存型だということだ。実は森保監督になってヨーロッパ組依存は一層進んだ。2018年のロシア・ワールドカップ(W杯)の時は、メンバー23人中海外組と帰国組は合わせて17人。ところが、2022年のカタールW杯の時は26人中22人だった。2020年10月と11月の親善試合4試合はヨーロッパ組だけで日本代表が組めるほどまで増えている。

 ヨーロッパでプレーしていて、森保監督がカタールW杯に招集していない選手は30人以上いる。映像を入手してチェックしているのだろうが、自身の目で見てプレーを、会って性格も確認したいことだろう。

 今回、監督が訪問を予定していると明かした国はドイツ、ポルトガル、スペイン、イングランド、ベルギー、オランダ。これまでに招集歴のない選手も今回の視察の際に目を引けば、6月には青いユニフォームを渡してもらえるかもしれない。

 また選手の動向なども監督にとっては気になるところだ。例えば、今季限りでフランクフルトを去ることが発表された鎌田大地はどの国のどんなチームに入るのか。森保監督は移籍したばかりの選手にはチーム内での立場を配慮して招集してこなかったが、今年始まるW杯予選を前にどんな状況なのかも確認したいことだろう。

 さらに言えば、国内組の選手の海外移籍も若年齢化が進んでいる。かつては「五輪経由代表行き」だったが現在は「海外経由五輪行き」とでも言えるように、日本人選手は若いうちから目を付けられている。ヨーロッパの各チームとのコネクションが増えれば増えるほど、移籍した次期代表候補選手の状況確認などが詳しくできるようになるはずだ。

 こんな現状ならば、森保監督とスタッフはヨーロッパに家を借りてときどき日本に帰国したほうが効率的かもしれない。もし、森保監督の次の代表監督がヨーロッパ人で「ずっとヨーロッパにいたほうが便利だ」と言われてしまったら、拒める材料は少ないだろう。

 そして、もしかしたら日本がW杯で優勝するためには、日本代表監督が海外視察に出かけなくていいことが重要かもしれない。海外の一流選手がこぞって日本でプレーしたがるくらいJリーグが世界のトップリーグになっていれば、監督は海外視察に行かなくていいのだ。

 いつかはそんな夢の日が訪れてほしいと思いつつも、現状ははるか遠い地点にいる。今はまだこうやって森保監督に何度も日本とヨーロッパを往復してもらうしかないだろう。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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