「下手したら降格」 日本代表OBがJ1残留争いを展望、今季の苦戦を危惧する2クラブとは?

2024年シーズン以降のチーム数増加に伴い今季のJ2降格は1枠に(写真はイメージです)【写真:Getty Images】
2024年シーズン以降のチーム数増加に伴い今季のJ2降格は1枠に(写真はイメージです)【写真:Getty Images】

【専門家の目|栗原勇蔵】昇格組の新潟と横浜FCは残留争いを回避する可能性有

 Jリーグは新たな成長戦略に基づき、Jリーグ全体の価値向上を図るべく、2024年シーズン以降の各リーグのクラブ数を変更する。J1・J2・J3のすべてが20クラブに統一されることに伴い、今季J1の降格枠は最下位の1チームのみとなる。「FOOTBALL ZONE」では30周年を迎えるJリーグを特集し、熱戦が予想されるJ1残留争いに注目。現役時代、横浜F・マリノス一筋で18年間プレーし、リーグ優勝も3回経験した元日本代表DF栗原勇蔵氏に展望を聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 J1残留争いは例年、「昇格組」が絡んでくるケースが多い。しかし、昨季J2を制したアルビレックス新潟は第2節でサンフレッチェ広島を2-1で下して6年ぶりのJ1勝利を飾り、昨季J2で2位の横浜FCもすでに勝ち点1を獲得している。

 新潟はコンスタントにパフォーマンスを発揮できれば、残留争いよりも高いレベルの戦いができると栗原氏は予想する。

「新潟は開幕戦でセレッソ大阪に2-2のドロー。チームを率いる松橋(力蔵)監督は、指導者として長年横浜F・マリノスにも携わっていた方で、モチベーターとしての手腕は素晴らしい。昨季、J2優勝に導いたのも頷けます。(優勝経験者の)千葉(和彦)ちゃんを中心に、一体感がある。広島戦では、連動したパスワークで相手を苦しめる場面もありました。チームがまとまるなかで、どこまで勢いを保てるか。それ次第でダークホースの1つになるかもしれません」

 一方の横浜FCは、近年の上位陣には戦力面で劣るとはいえ、過去に日本代表も経験しているFW小川航基というエースがいることは大きいと栗原氏は考えているようだ。

「開幕節の名古屋グランパス戦で前半4分に先制されて、どうなるかと思いましたけど、横浜FCが攻める場面もかなりあって、あれを継続できればJ1でも戦えると感じました。昨季J2得点王(26ゴール)の小川に依存する部分は大きくなると思います。ただ、京都(サンガF.C.)と比較して、負けている展開の中でも、攻撃の形は作れるのではないと思います」

スコルジャ新監督が就任も波に乗り切れない浦和【写真:徳原隆元】
スコルジャ新監督が就任も波に乗り切れない浦和【写真:徳原隆元】

開幕2試合でノーゴールの京都と浦和のサッカーを不安視

 栗原氏が「少し危険かもしれない」と危惧したのが、曺貴裁監督の下で3年目を迎える京都だ。昨季もJ1 16位(8勝12分14敗)でロアッソ熊本とのJ1・J2入れ替え戦に回り、1-1のドローで大会規定によりJ1残留を果たした。チームトップの9得点を挙げていた元ナイジェリア代表FWピーター・ウタカ(→ヴァンフォーレ甲府)が抜け、今季2試合でまだゴールを決めることができていない。

「(ブラジル人FW)パトリックを補強しましたけど、開幕戦は途中出場で、2試合で見てもまだノーゴール。もちろん実績を残してきた選手ですが、(35歳になって)全盛期ほどの圧倒的な強さは感じられない。曺監督の走るサッカーが機能しなかった場合は、残留争いが濃厚になってしまうかもしれません。FW豊川(雄太)、FW山﨑(凌吾)と経験のある選手もいますが、パトリック以外の外国籍選手はFWパウリーニョ、MFアラン・カリウス、GKヴァルネル・ハーンと心許ない。戦力的にJ1を戦い抜くには厳しいというのが率直な感想です」

 そして、開幕2試合の出来も加味したうえで、「下手したら降格もあるかもしれない」と栗原氏が指摘したのが、2試合連続ノーゴールで連敗を喫した浦和レッズだ。

「ポーランド出身のマチェイ・スコルジャ新監督を迎えて、パイプレス増加を含めて、攻撃的なスタイルの浸透を目指すと言われていますが、開幕2試合連続でノーゴール。チームが機能していない印象です。キャプテンに就任した(日本代表FW)酒井宏樹も、リーダーシップを執って力強くチームを牽引するタイプではない。ドツボにハマってしまうパターンが怖いですね」

 そんな浦和のキーマンの1人に挙げたのが、所属2年目を迎えるベテランの岩尾憲だ。

「リカルド・ロドリゲス前監督のサッカーの申し子的な感じで昨季加入したところはありましたけど、監督が代わっても試合に出続けていて、理解力や技術の高さを改めて感じました。チーム内には若い選手や外国籍選手も多いので、ベテランの岩尾の出来次第で、結果も変わってくんじゃないかなと思います」

 最下位を逃れるためのサバイバル争いは、例年以上に熾烈になるのは間違いない。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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