やんちゃで怒りん坊の鹿島ブラジル人MFディエゴ・ピトゥカ、どこか憎めない粋な男たる所以は?

エスコートキッズのにベンチコートを着せるディエゴ・ピトゥカ【写真:徳原隆元】
エスコートキッズのにベンチコートを着せるディエゴ・ピトゥカ【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】川崎戦は中盤で攻守に存在感を発揮

 飛び切りに陽気で情熱的。細かいことは気にせず、それでいてプライドも高い。南米ブラジル人の気質を言うとこんな感じだろうか。では、J1クラブ所属のブラジル人選手の中で、この典型とも言える気質を持ったブラジル人は誰になるのか。そう聞かれれば、迷わず鹿島アントラーズでプレーするディエゴ・ピトゥカと答える。

 そのD・ピトゥカが所属する鹿島は、J1リーグ開幕を前に行ったトレーニングマッチで結果を出せずにいた。低調な成績はチームの現状を如実に表しているものなのか。それともあくまでも公式戦を前にしたテストであり、低調な結果に気を揉むのは杞憂に終わるのか。昨年のリーグ戦2位で近年、安定した成績を収めている川崎フロンターレとの2月25日に行われた一戦(J1リーグ第2節)は、今シーズンの鹿島を占ううえで重要な試合であり、今後の指標となるものだった。

 開始5分に知念慶のゴールで幸先よく先制した鹿島は、強力な守備で川崎の攻撃に対応する。特に突破力のあるマルシーニョに対して、右サイドバック(SB)の常本佳吾が激しいマークで臨み、サッカーをさせなかったのが終盤まで川崎の攻撃を封じた要因だ。

 マルシーニョもなんとか突破口を開こうと、一度ゲームの中から離れ、孤立するようにサイドライン際まで広がり、マーカーの常本の意識を逸らそうとするなど工夫も見せていたが、この日は対面した常本の守備の前に沈黙。得意のドリブルで見せ場を作ることはできなかった。

 タイトな守備を見せたのは常本だけに限らず、最終ラインの植田直通と関川郁万のセンターバック(CB)コンビも対人プレーで強さを発揮し、最前線の鈴木優磨も無尽蔵とも思えるスタミナで前線から積極的に守備を行っていた。劇的な逆転負けを喫する最終盤まで、川崎の攻撃に対してチーム一丸となって対応していた。

 もちろん中盤のD・ピトゥカも例外ではなく、守備面での貢献が光った。さらに積極的な守備に加え、この背番号21番は攻撃に転じるとドリブルで攻め上がり、前線にタイミングのいいスルーパスを供給。攻撃の起点も担う攻守のダイナモとして、鹿島の中盤で存在感を発揮した。

エスコートキッズの女の子にベンチコートを着せてあげる心温まるシーンも

 D・ピトゥカの過去のプレーを振り返ると、ブラジル人の典型とも言える熱しやすい感情は、時に相手選手に向けられ、主審が下した判定とぶつかることも厭わないと思えるほど激しく露わにする時があった。そうした激しい感情表現には行き過ぎの部分があるのも確かだ。

 だが、チームが劣勢の展開を強いられると、最終ラインまで下がりGKやDFに対してボールを自分につなぐように要求し、自らのプレーで苦しい局面を打開しようと果敢に相手守備陣へと挑んでいく姿勢は、勝利への強いこだわりが感じられた。

 勝利すれば試合後にカメラを向けると満面の笑みを浮かべ、負ければひと一倍悔しさをにじませる。人間的に扱いづらいように感じられるが、そうした振れ幅の大きい感情表現は、何よりサッカーで負けることを嫌うブラジル人の典型と言える。

 そんなD・ピトゥカだが、川崎戦の試合前に彼の振る舞いで心温まるこんなシーンがあった。国歌斉唱の時に一緒に入場してきたエスコートキッズの女の子に自分のベンチコートを着せてあげた場面がそれだ。

 記録を見ればこの日の気温は9.7度。雨も降る中でユニフォーム姿の女の子を気遣った行為だが、それがなんとも粋な計らいだった。こういうことをさりげなくするから憎めないのだ、このブラジル人は――。

(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)



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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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