清水&磐田、“魔境”のJ2突破→J1復帰の可能性は? 前線は最強レベル、充実のCB陣…昇格へ“理想のシナリオ”考察

FIFA処分中で十分な強化ができない磐田、“実質補強”と言える要素も

 ジュビロ磐田はカタール・ワールドカップ(W杯)で日本代表のコーチを務めた横内展昭新監督を迎え、藤田俊哉スポーツダイレクター(SD)を旗頭に、クラブをあげての改革を図っている。周知のとおり、FWファビアン・ゴンザレスの契約に関するFIFAの裁定により、今年いっぱい外部からの選手登録ができない。それに伴い、大卒ルーキーのMF師岡柊生(磐田との内定取り消し後、鹿島アントラーズに加入)を逃すなど、戦力面で痛手を被ったことは否めない。

 しかしながら、藤田SDなど強化部の尽力もあってか、昨年J1を戦ったほとんどのメンバーが残留、さらにJ2栃木SCで主力を担ったDF鈴木海音など、期限付き移籍していた4人の選手が復帰した。純粋な新戦力はユースから高校生Jリーガーとなった17歳のFW後藤啓介だけだが、怪我で1年間を棒に振った左サイドバックのDF高野遼が状態を上げており、途中加入だった昨シーズンはほぼ出番のなかったブラジル人MFドゥドゥが好調をアピールするなど“実質補強”と言える要素もある。

 鹿児島キャンプの期間、横内監督は戦術のベースになる攻守の切り替えや球際のところを強調して、個の意識改革に時間を割いており、開幕前の時点でチームの完成度が高いとは言い難い。そうした状況で、いきなり2月18日の開幕戦で昇格候補のファジアーノ岡山が相手というのは酷だが、ホームゲームにしっかり勝利できれば波に乗っていけるはずだ。

 昇格のためにはプロ26年目となるMF遠藤保仁やキャプテンに就任したMF山田大記など、経験豊富な選手の働きは心身両面で不可欠だが、ドリブル突破を武器とするMF古川陽介など、若手の突き上げ無しに昇格レースを乗り切るのは難しい。昨シーズンから大きくメンバーが変わっていないなかでも、新監督の目によって競争意識が高まっているのは好材料だ。

 前線は規格外の打開力を誇るFWファビアン・ゴンザレスの出場停止解禁時期がはっきりしない。完全移籍で心機一転を図るFW杉本健勇、キャンプから好調のFWジャーメイン良、そして横内監督も期待するルーキー後藤などが相当に奮起しないと、清水のようなチームに対抗することは難しい。一方ディフェンス陣では、東京五輪のブラジル代表優勝メンバーであるDFリカルド・グラッサの残留は大きく、リーダー格のDF伊藤槙人に加えてDF山本義道、レンタルバック組の鈴木やDF中川創、現在は負傷離脱中のDF森岡陸と、センターバック(CB)の充実度はJ2屈指だ。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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