フライブルク堂安律「戦術どうこうじゃなく…」 6失点大敗から再起、CL出場権獲得も視野「かなりポジティブ」

【ドイツ発コラム】6失点のボルフスブルク戦から見せたフライブルクの「リバウンド」
ドイツのサッカーファンにとって、愛すべきクラブの試合が持つ優先順位は絶対だ。それは大人だけでもなく、子供たちもそうなのだろう。堂安律が所属するフライブルクが、長谷部誠と鎌田大地がプレーするフランクフルトを迎えた一戦(1-1)は平日水曜日の夜開催だった。
ちょうど僕が監督をするU-19の練習時間とかぶったのだが、実に8割の選手が試合観戦に行くという理由で練習を欠席連絡。「たぶんそうなるだろうな」とアシスタントコーチと話をしていたので、こちらにそこまでの驚きはない。チームのメーリングリストに「水曜日の練習はSCフライブルクが試合だから休み」という連絡を入れて、僕は僕で取材に心置きなく出かけることにした。
クラブではフライブルクの戦いぶりがよくテーマに上がるが、話し始めて5分もすると大体、堂安の話になる。
「あれほどの選手はそうはいない」
「フライブルクが過去補強した選手の中でもトップレベルに入る」
「彼のプレーを見ていると、とにかくワクワクする」
今回のフランクフルト戦での活躍ぶりには彼らも大いに興奮したことだろう。堂安だけではなく、フライブルクはチームとしてとても躍動感のあるプレーを見せていた。その前の試合でボルフスブルクに0-6で一蹴されたことがいい意味で自分たちを見つめ直すきっかけとなったようだ。
「内容的にはかなり素晴らしいゲームだったと思います。相手のチャンスもほとんどない形で僕たちが試合を運べていた。勝ち点1で満足はしてないんですけど、ポジティブな勝ち点1だったなと思います。特に0-6で負けた前回からのリバウンドという意味ではかなりポジティブな要素かなと」(堂安)
ワールドカップ(W杯)中断前に2位につけていたフライブルクには、自分たちへの大きな自信があったことだろう。監督のクリスティアン・シュトライヒが「少しのずれでも生じてしまったら、ボルフスブルク相手には苦しい試合になる」というニュアンスの話をしていたが、まさかあそこまで失点を重ねることになるとは誰も予想もしていなかったはず。15節終了時までチーム失点が17と、バイエルン・ミュンヘンに次いで失点が少なかったチームが1試合で6失点を喫した。
「我々は常に一歩遅すぎた。相手にあそこまで多くのスペースを与えてしまっていたのはありえないことだ。チームとしてひどい出来だった。私も含めてだ。だがそれは我々すべてにとっていいことだったのかもしれない。あの試合のパフォーマンスは選手がやりたかったことではないのだから」(シュトライヒ監督)

中野吉之伴
なかの・きちのすけ/1977年生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで、さまざまなレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス取得(UEFA-Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、16-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。『ドイツ流タテの突破力』(池田書店)監修、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)執筆。最近はオフシーズンを利用して、日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで精力的に活動している。