履正社に圧倒される展開も「100点満点に近い」 佐野日大、劣勢でも勝てた“粘りの精神”

履正社とのPK戦を制した佐野日大【写真:徳原隆元】
履正社とのPK戦を制した佐野日大【写真:徳原隆元】

2試合で10得点の履正社を相手に絶える展開も、PK戦制しベスト8へ

 1月2日に行われた第101回全国高校サッカー選手権大会3回戦で、佐野日大(栃木)が履正社(大阪)をPK戦(5-4)の末に下した。履正社は選手権2試合で10得点と圧倒的な攻撃力を誇示してきたが、佐野日大が作る守備ブロックに苦戦。先制される苦しい試合展開もあり、MF名願斗哉の得点で1-1にするのがやっとだった。

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 80分の死闘後、履正社の先攻でスタートしたPK戦について、佐野日大のGK平岡倖輝は先輩たちのために挑んだと振り返る。

「自分はPKが得意なので、絶対に止めるという思いと、先輩のサッカー人生をまだここで終わらせたくないので、挑みました」

 すごく緊張していたとも話す平岡は「でも自信があったので。緊張しましたけど、自信を持って対峙しました」と言う。そのPK戦が動いたのはともに2人ずつが決めた3人目。履正社は、MF小田村優希がPKスポットに立つ。

 平岡は1本目も2本目も飛ぶ方向は合っており「(読みが)当たっていて、これは次も読めるなって思って。3本目も(読みが)当たるなと思っていた」と言う。対峙した小田村については「ちょっと自分から見て、右を意識している感じがあったので。右かなと」と感じ、その方向に飛んだのだという。ドンピシャのタイミングで飛んだ平岡が、小田村のPKをセーブ。結局この1本がチームに勝利をもたらすこととなった。

 勝利した佐野日大の海老沼秀樹監督によるとPK戦は「勝ったり負けたり」だとのことで、特段に強いわけではない。ただしPK戦に入る前に「自信を持っていきましょうということで。せっかくPK戦まで来たので。思い切りいきましょうという話をしました」と明かした。

 もちろん大会前には練習はしていたとも言うが「大会の緊張感と、練習の緊張感とは違いますので。ただ自分の信じたコースに思い切って蹴ってくれたのかなと思います」と5人全員が決めたPK戦を振り返っていた。

 佐野日大が放ったシュートは80分を通してゴールした1本のみ。DF大野結斗が投げるロングスローのこぼれ球をDF青木柾が蹴り込んだ後半開始直後の場面だけだったが、履正社に圧倒される試合展開も、ハーフタイムの海老沼監督の言葉もあって乗り切っている。

 海老沼監督は、カタール・ワールドカップにおける日本代表対コスタリカ代表を引き合いに「3割保持(7割は保持されている劣勢のチーム)でも、勝っている試合は今までも、ワールドカップもそうだし、ほかの試合でも、そういうのがあるので。そこは絶対チャンスがある」と送り出している。

 そうしたメンタルコントロールも含め、佐野日大が優勝候補の履正社に勝利することとなった。海老沼監督は「思った以上に、100点満点に近いように一生懸命やってくれたと思います」と選手たちを称えた。

(江藤高志 / Takashi Eto)



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江藤高志

えとう・たかし/大分県出身。サッカーライター特異地の中津市に生まれ育つ。1999年のコパ・アメリカ、パラグアイ大会観戦を機にサッカーライターに転身。当時、大分トリニータを率いていた石崎信弘氏の新天地である川崎フロンターレの取材を2001年のシーズン途中から開始した。その後、04年にJ’s GOALの川崎担当記者に就任。15年からはフロンターレ専門Webマガジンの『川崎フットボールアディクト』を開設し、編集長として運営を続けている。

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