【W杯】日本の失点は「それをやったらダメというプレー」 吉田麻也は「みんな焦るな!」のメッセージを送ることもできた
【専門家の目|金田喜稔】コスタリカ戦で生まれた失点シーンについて考察
森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月27日のカタール・ワールドカップ(W杯)グループE第2節でコスタリカ代表(同31位)と対戦し、0-1と惜敗した。「天才ドリブラー」として1970年代から80年代にかけて活躍し、解説者として長年にわたって日本代表を追い続ける金田喜稔氏が、コスタリカ戦で生まれた失点シーンについて考察した。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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日本の失点シーンは、いろいろなミスが絡み合ったと思う。そのなかでクローズアップされているのが吉田麻也の中途半端になったパスだ。
自陣エリア前で吉田はパスを選択した。つなごうとする判断自体は十分理解できるし、守田英正にボールを渡そうとして、そのままつながっていれば何も問題ないシーンだった。結果論で言えば、安全第一で大きくクリアする選択肢もあったはずだ。それは振り返れば、そういう選択肢もあったというだけのことだが、タッチラインを割るぐらいに蹴り出してもいいし、前線に大きく蹴り出しても良かった。
ただ1つ言えるのは、試合終盤でキャプテンの吉田がそれをやったらダメ、というプレーが生まれたということだ。結果的に失点につながった以上、結果論で言えばクリアのほうが良かったということになる。つなぎたくなる吉田の気持ちはよく分かるし、実際につながっていれば、誰も気にとめないシーンだったから、それ自体は難しい選択だった。
パスを選択するにしても、あそこまでボールが浮かなければ、また違っただろう。やや浮いた分、守田が相手に寄せられて、スライディングした守田もコントロールし切れないという負の連鎖が続いた。この点で言えばシンプルな技術ミスと言える。
試合全体を俯瞰して考えた場合、0-0であの時間帯というなかでは、やはり安全第一という選択肢もあった。特に吉田ぐらい経験値があれば、大きくボールを蹴り出して、「みんな焦るな! 勝ち点1でもいいんだぞ!」「最低でも絶対に引き分けるぞ!」というメッセージを送ることもできただろう。
繰り返しになるが、日本が主導権を握る展開が続いていたし、あと一歩で崩せるようなシーンもあったなかで、パスをつなぐという吉田の判断も理解できる。難しい選択だったが、結果的に勝負の分かれ目となってしまった。
金田喜稔
かねだ・のぶとし/1958年生まれ、広島県出身。現役時代は天才ドリブラーとして知られ、中央大学在籍時の77年6月の韓国戦で日本代表にデビューし初ゴールも記録。「19歳119日」で決めたこのゴールは、今も国際Aマッチでの歴代最年少得点として破られていない。日産自動車(現・横浜FM)の黄金期を支え、91年に現役を引退。Jリーグ開幕以降は解説者として活躍。玄人好みの技術論に定評がある。