【W杯】「不用意に…」 元主審・家本氏がドイツ戦の日本失点シーンを考察、なぜPK献上は起こった?

元主審・家本氏がドイツ戦のPKシーンを考察【写真:ロイター】
元主審・家本氏がドイツ戦のPKシーンを考察【写真:ロイター】

【専門家の目|家本政明】失点につながった場面を解説、対戦時のドイツの印象も明かす

 森保一監督率いる日本代表(FIFAランキング24位)は、11月23日にカタール・ワールドカップ(W杯)グループリーグ第1節でドイツ代表(同11位)と対戦。W杯優勝経験国を相手に堂々と戦い、2-1の逆転劇を演じて大金星を挙げた。元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏が、日本の失点につながったペナルティーキック(PK)の場面を解説している。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也)

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 ドイツ戦の前半は、立ち上がりこそ日本のハイプレスの良さが出たが、その後流れを相手に掴まれ攻め込まれる展開。前半31分、サイドチェンジで一気にフリーになったDFダビド・ラウムに対して権田修一(清水エスパルス)が飛び出すと、DFダビド・ラウムに距離を詰めたところでファウル。PKの判定となり、これをMFイルカイ・ギュンドアンに蹴り込まれ、前半33分のゴールで0-1のビハインドを背負った。

 前半の印象について家本氏は、「苦しかったですね。でもドイツが思ったよりもコンディションが良くないと感じていました。もちろん強かったので日本は苦労し、PKで失点となってしまいました」と言及。PK献上については「日本は全体的に前のめりになっている状況でした。あそこで無理にチェックに行かなくても、ほかのDFのカバーを待つ選択もありましたが、焦って慌ててコンタクトしてしまった印象ですね」と流れを振り返っている。

「権田選手の最初の足の接触も、そのあとの後方からの接触も個人的にはどちらもファウルに値すると思うので、判定としてはPKで正しかったと思います。我慢できずに不用意に突っ込んでしまったなと感じました。優勝候補の国と初戦で戦う難しさもあったのかなと思います。積極的なプレスの意識もチームとしてあったでしょうし、権田選手を責められるものではないでしょう」

 家本氏は、日本のドイツにするボールを奪う姿勢が前提にあったことを指摘しつつ、PKにつながってしまった原因を考察していた。

 その後、日本は後半にシステム変更し、続々と攻撃的な選手を投入して反撃を仕掛けた。そして後半30分にMF堂安律(フライブルク)、同38分にFW浅野拓磨(ボーフム)といずれも途中出場の選手がゴールを奪い、逆転に成功した。

 家本氏は同点の瞬間を「夜中でしたが思わず叫んでしまいましたよ」と語り、「4年前のPKでの先制弾(対コロンビア代表戦/2-1)の時と同じように喜びました」と試合中の興奮を回顧。「パス、動きの量や質,連係、シュートの精度などを見ていて、強い時のドイツを後半もあまり感じていませんでした。日本にもチャンスあるなと思っていました」とドイツに感じた印象を話しつつ、「もしかしたら勝てるかも?」と思った矢先に浅野が勝ち越しゴールを決め、勝利の瞬間は「非常に嬉しかった」と日本の“大金星”を1人のサポーターとして喜んでいたようだ。

家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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