日本代表、ドイツ戦の布陣と配置を読み解く 後半に3パターンのシステム採用、選手の役割はどう変わった?

後半の布陣図【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
後半の布陣図【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

ドイツのビルドアップに規制、できるだけ高い位置からカウンターを狙う

 ここで森保監督が後半スタートからとったシステムが3バックなのか、5バックなのかという定義はあまり意味を成さない。あくまでドイツのビルドアップに規制をかけて、できるだけ高い位置から奪ったらカウンターを狙うというプランで、後半から入ったDF冨安健洋を左CB、DF吉田麻也が中央、DF板倉滉が右CBを担った。

後半の布陣図2【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
後半の布陣図2【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

 うしろのレーンを埋めながら前にプレッシャーをかけるという意味では5バックと取ることもできる。選手の中でも表現はまちまちだが、ここでは3-4-2-1としたい。やはり前から守備に行くなかで、シャドーの選手がセンターフォワードと連動しながら、ワイドに開いたCBにプレッシャーをかけるというのが重要な意味を持っていた。

 そして同じシステムのまま左に後半12分から投入されたMF三笘薫が左ウイングバック、さらには同26分からピッチに立ったMF堂安律がシャドーに入るとMF鎌田大地がボランチに。同30分にはMF南野拓実がシャドーに投入され、今度は伊東が右ウイングバックに回った。

後半の布陣図3【画像:FOOTBALL ZONE編集部】
後半の布陣図3【画像:FOOTBALL ZONE編集部】

 このシステムと配置が見事にはまる形で、日本は三笘の仕掛けから南野がシュート性のクロスを出したボールをGKマヌエル・ノイアーに弾かれたが、堂安が冷静なシュートで同点ゴール、さらに板倉のロングパスからFW浅野拓磨が見事なフィニッシュで逆転ゴールを決めた。そのあとは吉田キャプテンが森保監督と確認するシーンも見られた。そこから終盤はほぼ明確な5バックにして、5-4-1のブロックを敷きながら、ボールを奪えばスペースに持ち出すなど、うまく時間を進めた。

 後半アディショナルタイムが7分と掲示されたが、板倉は「サウジ戦もそうでしたし、そういう覚悟はしていた」と振り返る。それでもセットプレーからGKノイアーが攻撃参加してから試合終了のホイッスルが鳴るまでは、かなり長く感じたという。最後は試合に出なかった選手もピッチ内に駆け寄って歓喜の輪を作った。森保監督のプランニング、選手の実行も見事だったが、やはりチームとして勝ちに行く一体感があったからこそ、ドイツに勝利するための90分を完結できたのだろう。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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