【W杯】浅野拓磨、ドイツ戦で“高難度シュート”を決めたワケ 佐藤寿人氏「常に追求している」
【専門家の目|佐藤寿人】積極性が実った浅野 実戦に近い形での練習が結果につながる
森保一監督率いる日本代表は現地時間11月23日、カタール・ワールドカップ(W杯)初戦のドイツ戦に臨み、2-1の逆転勝利を収めた。FW浅野拓磨が決勝弾を記録したなか、彼をルーキー時代から知る元日本代表FW佐藤寿人氏に話を聞いた。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)
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ドイツ戦のヒーローとなったのが、後半38分に決勝点を決めた浅野だ。佐藤氏はサンフレッチェ広島時代、ルーキーの頃から浅野を見てきた。「(怪我から)復帰して実戦は2戦目で、それもドイツが相手。本当によくここまで合わせてきたなというふうに思います。本当に素晴らしいですよね」と目を細めつつ、今回の活躍への感慨を語った。
「前回のW杯以降、彼はクラブでも移籍をしたり、環境を変えたりというところで、望んでいたような4年間ではなかったと思います。でも、少しずつ自分の立ち位置を結果で勝ち得た。W杯出場に大きく貢献していたなかでの開幕前の怪我でしたし、4年前も最終的に落選してしまうという悔しさを味わっています。正直、僕は26人のなかに彼が入ったことだけで嬉しかったんですが、本当に最高のゴールを見せてくれました。お決まりのジャガーポーズもやってくれて、ゴール以外でもゴールに向かっていく積極性はすごく感じました」
ゴールシーンはDF板倉滉のロングボールに対して、DFニコ・シュロッターベックの先手を取って抜け出した。「ファーストタッチも含めて、相手よりも1歩、半歩前に体を入れたことで、フィニッシュできる時間を作りました。拓磨の積極性、トライがゴールにつながったかなと思います」と佐藤氏。シュートも非常に難易度の高いものだったが、そこには日々の鍛錬による裏付けがある。
「あの(角度がない位置からの)シュートは常に追求していますね。(広島で)一緒にやっていた時は常に、簡単なシュートではなくて、常に実戦に近い形、寄せられながらとか、ファーストタッチで前に入ってからとか、動きながらフィニッシュするような意識が練習からありました。ゴールという結果をプロでまだそんなに残していない時からそういうイメージでやっていたので、あの場面も普段と同じですね。実戦を意識しながら、ボールを受けた時にGKに対してどのコースを狙ったらいいのかを意識している。
広島時代もそうですし、特に海外に出てからヨーロッパの舞台で、肌感覚で彼が積み上げてきたものを素晴らしい場面、場所で見ることができた。純粋に嬉しかったですし、誇らしかった。自分が出ていない日本代表の試合で、初めて涙が出ましたね」
試合後には浅野の家族ともスタジアムで会ったという佐藤氏は、「久しぶりにお父さんとお会いすることができて、思わず抱き合ってしまいました」と明かす。
「彼がプロに入る時、お父さんの思いも聞いていましたし、彼がいろんなものを背負っていることも知っていました。プロサッカー選手として成長していく姿を間近で見てきたので、もう最高でしたね。最後、試合が終わってから現地のタクティカルの映像で、ニャブリと拓磨のデータが比較されていたんです。僕はサブのところに拓磨ともう一人後輩の相馬(勇紀)の名前が入っているだけでも十分だったんですけど、最後にニャブリと比較されている。本当にたくましいなと思いました」
強豪ドイツを破る決勝弾で、多くの称賛を浴びることになった浅野。紆余曲折を経てたどり着いたW杯の舞台で、さらなる活躍を見せてくれるはずだ。