ボランチ鎌田がカナダ戦で機能、空いた日本代表“トップ下”の最適な人物とは?
ボランチ投入の鎌田は“守備”を意識、キープ力も発揮し攻撃の起点に
11月1日に森保一監督は、日本代表のカタール・ワールドカップ(W杯)の最終登録メンバー26名を発表した。おそらく、この時はMF鎌田大地(フランクフルト)をボランチで起用することは、考えていなかったはずだ。
ボランチはMF遠藤航(シュツットガルト)、MF柴崎岳(レガネス)、MF守田英正(スポルティング)、MF田中碧(デュッセルドルフ)の4人でやりくりする予定で、W杯の開幕まで右膝を負傷していた田中の回復を待つプランだったはずだ。
ところがメンバー発表後のクラブでの試合で、遠藤が脳震とうを起こすと、日本代表に合流した守田も左ふくらはぎを痛めて、チーム練習に合流できない状況となった。これによりW杯前、最後の親善試合である現地時間17日のカナダ戦には、柴崎と復帰を目指す田中を先発で送り込むことになった。とはいえ、さらなるアクシデントが起きないとも限らない。そこでこれまで代表ではテストされていなかった鎌田のボランチが、ここで試されることとなった。
結論から言えば、鎌田はボランチでも問題なくプレーできていた。もともとトップ下の一番手として、今回26名のメンバー入りをしていただけに、攻撃面に期待が集まりがちだ。だが、この日はそれだけでなく、球際でボールを奪いきる強さ、チャンスでは3列目から最前線まで走り込み、ピンチでは自陣深くまで戻る運動量が目を引いた。
鎌田自身も投入された際、「攻撃はもちろん、自分がボールを持ったら失わないようにとは思っていましたが、それよりも守備がうまくいっていなかった。みんな暑かったことで、後半に関しては迫力もなかった。自分はまだ動けていたので、ボールが入ったら強めにプレスをかけに行こうと思った」と、まずは守備からチームを立て直すことを考えていたことを明かしている。
攻撃面でもボールの収まりどころがなかったなかで、懐の深いキープを見せた。なかなかボールを受けることができなかったMF堂安律(フライブルク)にもボールが入るようになった。堂安も鎌田のボランチ起用について「より攻撃的になると思いますし、パスがうまい選手なので前は生きると思う。僕はずっとサイドに張るタイプではないので、大地くんみたいな選手がいると助かる」と、やり易さを認めていた。
鎌田のボランチ起用は、間違いなく「あり」だ。だが、そうなると今度はトップ下に問題が生じる。9月のエクアドル戦(0-0)に続き、カナダ戦でもMF南野拓実(モナコ)は献身的なプレッシングは見せたが、攻撃面ではキープの面でも、仕掛けの面でも物足りなかった。また、後方からロングボールが出てもカナダの守備陣に簡単に跳ね返されていた。高さがある鎌田が前にいれば、もう少しボールが収まるようにも思えたが、ボランチで起用するとなると、そうもいかない。トップ下の適任不足という問題が、鎌田をボランチに置いた時に出てきてしまう。
この日、MF相馬勇紀(名古屋グランパス)の先制ゴールをアシストした柴崎は、この場面以外でも縦へ鋭いパスを連発した。その一方で低い位置でのボールロスト、守備面では相手に体を寄せてもボールを取り切れない弱さが目に付いた。鎌田は「ボランチで出るなら、リスク管理が大事になる。攻撃よりも守備に比重を置かないといけない」と話し、持ち前の攻撃力が発揮できにくくなることを示唆したが、守備面でも問題なく機能する。実戦でテストはできないが、このカナダ戦を見る限りボランチに鎌田、トップ下に柴崎というのは、遠藤、守田が間に合わない場合、選択肢に入れるべきではないだろうか。
FIFAランクでは、日本の24位に対してカナダは41位。すっきりと勝って本大会に向かいたいところではあったが、中盤の人を欠いている現状の深刻さも浮き彫りになった。この試合を当然、ドイツ、コスタリカ、スペインも分析してくるはず。森保一監督は、間もなく開幕するW杯をどのように戦う選択をするのだろうか。