J1優勝の横浜FMに見た団結力 宮市亮のシャーレアップにつながった“フォア・ザ・チーム”の姿勢

横浜F・マリノスが2019年以来のJ1リーグ制覇【写真:徳原隆元】
横浜F・マリノスが2019年以来のJ1リーグ制覇【写真:徳原隆元】

【カメラマンの目】J1優勝を懸けた横浜FMの戦い、ベンチメンバーは積極的に声出し

 サッカーは選手、スタッフ、レフェリー、記者・解説者、フォトグラファーなど、それぞれの立場から見える世界がある。22歳の時からブラジルサッカーを取材し、日本国内、海外で撮影を続ける日本人フォトグラファーの徳原隆元氏が、11月5日に行われたJ1最終節・ヴィッセル神戸対横浜F・マリノスの一戦を取材。カメラマンの目に映った独自の光景をお届けする。

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「イケ、イケー」

 横浜F・マリノスにとって5度目の優勝へのチャレンジとなったJ1リーグ最終節ヴィッセル神戸戦。横浜FMは前半26分、エウベルのゴールで幸先よく先制したが、前半終了間際に武藤嘉紀に渾身のヘディングシュートを決められ同点とされる。しかし後半8分、水沼宏太が放ったシュートを相手GKが弾いたところに西村拓真が詰めて、優勝を目指すアウェーチームは二度目のリードを奪うことに成功する。

 前半ロスタイムに追いつかれ、優勝から半歩後退していた横浜FMは、この西村のゴールによって再び勢いを取り戻すことになる。チームの推進力は上がり、攻勢に拍車がかかっていく。

 ここで、ピッチでボールを持ったエウベルに対して、出番のときを待ちゴール裏でウォーミングアップを行っていたレオ・セアラが、冒頭の短い言葉を同郷の背番号7番に向けて送ったのだった。若い藤田譲瑠チマもゴールライン際に位置するカメラマンたちの背後から、チームを盛り上げようと積極的に声を出していた。

 振り返れば横浜FMにとって、リーグ終盤は苦しい戦いの連続となった。優勝のチャンスが訪れた第31節ガンバ大阪戦、第32節ジュビロ磐田戦でまさかの連敗を喫し、2位・川崎フロンターレの激しい追い上げを受けることになる。しかも終始、攻勢に出ながらも守る相手の最終局面を崩せず、カウンターから失点する相手の術中に嵌った末の敗戦は、結果に加えチームの勢いに陰りが差すゲーム内容だった。

 しかし、続く第33節浦和レッズ戦で、リーグ首位を快走していたときの好調を取り戻すチャンスが訪れる。真っ向勝負を挑んできた浦和に対し、横浜FMは前線のブラジル人選手の活躍により4点を奪取し、ホーム最終戦に快勝したのだった。

 もしこの試合で浦和がリーグ順位そのままの力関係を強く意識し、ディフェンス重視で臨んできていたら、横浜FMはG大阪戦、磐田戦のように長所を出し切れず、再び上昇気流に乗ることができなかったかもしれない。攻め合う展開に攻撃力で勝る横浜FMは本来の戦い方で勝利し、最終節を前にチームのベクトルは上昇へと転じたのだった。

 そして迎えた最終節。決勝点となった西村のゴールは文字通り勝敗の行方を決める重要な分岐点となった。ゴールを決めた西村の全身で歓喜を表現する姿を受けて、チームにさらなる火が入った。

 出番を待つ選手たちもピッチで躍動する仲間たちへの声援を強めていく。そして途中出場の仲川輝人のゴールで横浜FMの雰囲気は最高潮に達した。

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徳原隆元

とくはら・たかもと/1970年東京生まれ。22歳の時からブラジルサッカーを取材。現在も日本国内、海外で“サッカーのある場面”を撮影している。好きな選手はミッシェル・プラティニとパウロ・ロベルト・ファルカン。1980年代の単純にサッカーの上手い選手が当たり前のようにピッチで輝けた時代のサッカーが今も好き。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。

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