横浜F・マリノス番記者が選ぶMVPは? 卓越した打開力で3季ぶりリーグVへ貢献、“アンタッチャブル”なアタッカーを選出

横浜F・マリノスが2019年以来のJ1リーグ制覇【写真:徳原隆元】
横浜F・マリノスが2019年以来のJ1リーグ制覇【写真:徳原隆元】

【J番記者コラム】選手層の厚さを示した横浜FM、今季MVP&陰の功労者を選出

 2022シーズンのJ1リーグは11月5日に最終節を迎え、横浜F・マリノスが2019年以来、3季ぶりにタイトルを奪還した。カタール・ワールドカップ(W杯)の開幕を控え過密スケジュールとなったなか、就任2年目のケヴィン・マスカット監督の下、選手層の厚さを見せつけての栄冠だった。

 今季の横浜FMは唯一、全試合フル出場を続けたGK高丘陽平を除き、FW~DFの各ポジションで複数選手を起用。誰が出てもハイレベルの戦いを続け、リーグトップの総得点(70)、最少失点(35)で、栄冠を勝ち取った。

 チームトップの11得点をマークしたFWレオ・セアラやFWアンデルソン・ロペスのほかにも、目を見張る貴重な働きを示した選手たちが多数いたなか、とりわけ称えられるべきプレーヤーは果たして誰か。クラブ番記者に今季MVP、陰の功労者を選んでもらった。

■MVP
エウベル(FW)
今季リーグ成績:29試合8得点

 横浜FMは特定の個に依存しないプレーモデルを築き上げてきた。得点やアシストの数字が見事に分散されているのはその証左だろう。どこからでも点を取れるだけでなく「誰が出てもマリノス」はシーズンを通しての道標にもなっていた。

 しかしながら、このブラジル人アタッカーの卓越した局面打開力抜きにアタッキングフットボールは成立しなかった。

 今季は主戦場を左ウイングに変えた。昨季までは右ウイングとして縦方向への突破を試みたのに対し、右利きのエウベルはボールを受けてから中央寄りへ侵入する機会を増やしていく。

 シーズン開幕当初こそ戸惑いも見られたチャレンジだったが、次第にフィットしていくあたりにセンスの高さが感じられた。初速と独特のリズムでボールを運ぶドリブルは常にカウンターの起点となり、対応するディフェンダーが頭で分かっていても止められない“アンタッチャブル”な存在だった。

 第33節の浦和レッズ戦(4-1)でのパフォーマンスは圧巻だった。勝利を大きく手繰り寄せる2得点だけでなく、複数人を切り裂くドリブル突破からアンデルソン・ロペスのゴールもお膳立て。一度ボールを持てば止めるのは至難の業で、対面したのが日本代表DF酒井宏樹だったことも価値を上げる要因になった。

 最終局面における決定力という課題は依然として残っているが、一方で慈愛の精神にあふれたラストパスで仲間の得点をお膳立て。「自分は常にチームメイトにオプションを与えるプレーを意識している」と繰り返す言葉に偽りはない。エゴイスティックな面を一切感じさせない性格もファミリー感を重要視するチームとの相性が抜群だった。

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藤井雅彦

ふじい・まさひこ/1983年生まれ、神奈川県出身。日本ジャーナリスト専門学校在学中からボランティア形式でサッカー業界に携わり、卒業後にフリーランスとして活動開始。サッカー専門新聞『EL GOLAZO』創刊号から寄稿し、ドイツW杯取材を経て2006年から横浜F・マリノス担当に。12年からはウェブマガジン『ザ・ヨコハマ・エクスプレス』(https://www.targma.jp/yokohama-ex/)の責任編集として密着取材を続けている。著書に『横浜F・マリノス 変革のトリコロール秘史』、構成に『中村俊輔式 サッカー観戦術』『サッカー・J2論/松井大輔』『ゴールへの道は自分自身で切り拓くものだ/山瀬功治』(発行はすべてワニブックス)がある。

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