後輩からのビンタも許容? 中村俊輔は人一倍の努力家で後輩思い…元同僚が明かす“素顔”

レッジーナ時代の中村俊輔(左)と横浜FM時代の栗原勇蔵氏【写真:Getty Images】
レッジーナ時代の中村俊輔(左)と横浜FM時代の栗原勇蔵氏【写真:Getty Images】

技巧派の印象が強いシャビとイニエスタは「速い」と証言

 俊さんのキック精度は、持って生まれた才能はもちろん、絶え間ない努力によってあのレベルに到達しています。特段キック力があるわけではないなかで、鋭いボールを蹴ったり、キャリア終盤にはブレ球も蹴れるようになっていました。実は、数回しかやったことがないというボウリングを一緒にやった時、いきなりスコア200を出したんです。手でも足でも微妙な感覚があるんだと思いましたし、周囲と比べても練習量が桁違いなので、なおさら技術に磨きがかかる。もう鬼に金棒ですよね。

 ただ、俊さんのキック時のモーションを見て分かるとおり、足に負担がかかるので、いわゆる慢性的な“ねずみ(関節遊離体)”を抱えていました。自分もねずみを経験しましたが、ロック(関節が固まって動かなくなる)してしまうと、集中力も落ちるくらい痛い。いい時と悪い時があって、常にアイシングしていたイメージ。横浜FC時代には、「足首、ダメだわ」とよく言っていました。逆に言うと、それ以外に痛い箇所はあまり聞いたことがないです。ほかに筋肉系の故障も少なからずあったかもしれないですけど、人一倍練習しながら、人一倍ケアもするストイックな俊さんだからこそ、あの年齢(44歳)までできたと思います。

 俊さんが言っていた言葉で、印象的なものがあります。「シャビとか(アンドレス・)イニエスタの何が凄いかって、速いんだよ」。(元スペイン代表の)シャビとイニエスタはスピードタイプではなくて技巧派の印象がありますけど、「シャビはターンがめちゃくちゃ速い。根本的に違う」と聞いて、(セルティック時代の2007-08シーズンのUEFAチャンピオンズリーグで)実際に対戦したからこそ感じられることだなと。あの当時はまだ海外でプレーしている日本人選手も今ほどは多くなかったので、俊さんはその世界にいるんだと感じました。

 俊さんを語るうえで欠かせないのは、生粋の「サッカー小僧」だということです。技術面で天才であると同時に、常にサッカーのことを考えていられるのは超一流になるためのスキルであり、最強の武器だと思います。その打ち込み度合いは、間違いなく日本のサッカー界でトップ。「サッカーにすべてを注いだ男」と言ってもいいでしょう。

 俊さんは、日本サッカー界で歴代5本の指に入る選手。もうあんなに観る者をワクワクさせられる人は出てこないかもしれない。一緒にプレーさせてもらって、たくさん勉強させてもらいました。自分はその境地に達することはできませんでしたが、ものすごいプレッシャーと戦っていたので、まずはお疲れさまでしたと言いたいです。そして、これから「中村俊輔 物語」の第2章を見届けたいと思います。

(FOOTBALL ZONE編集部)



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栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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