森保Jの“狙い”はハイプレスか 元日本代表FW佐藤寿人氏が「ファーストチョイスになり得る」と指摘する選手は?

佐藤寿人氏がファーストチョイスに指名したのは?【写真:高橋 学 & Getty Images】
佐藤寿人氏がファーストチョイスに指名したのは?【写真:高橋 学 & Getty Images】

【専門家の目|佐藤寿人】日本代表は前田大然、上田綺世、浅野拓磨が前線を担う

 11月1日、カタール・ワールドカップ(W杯)に臨む日本代表のメンバー26人が発表された。20日の開幕が迫るなか、元日本代表FW佐藤寿人氏に、初戦のドイツ戦に向けた森保一監督の思惑やFW陣の起用法の行方などを分析してもらった。

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 23日に初戦・ドイツ戦を迎える日本。ここでどのような戦い方を選択し、どのような結果に結び付けるかによって、今回のW杯での命運も大きく変わってくるだろう。

「アジア予選で戦ってきたなかでは4-3-3がベースになっていましたが、9月は4-2-3-1に戻しています。2列目の選手の状態が非常にいいこともあり、現時点では4-2-3-1で臨むのかなと思います。初戦で勝ち点ゼロではグループリーグ突破が厳しくなる以上、勝ち点1でも取ると考えたときに、引き込んで守備をするというよりは、前からハメにいくことになるはず。その強度を90分間、なるべく落とさずにやるという狙いにはなると感じています。ある程度アバウトなボールを入れさせることができれば、今の日本代表のディフェンスラインの選手は欧州レベルの経験値があって、はね返すことが計算できます。ビルドアップで時間を与えないように、となっていくと思います」

 メンバー発表では「フィールドプレーヤー」となっていたが、実際にFWとして起用される見込みなのは前田大然、上田綺世、浅野拓磨の3選手。ここから見える戦術的な狙いとは。

「前田は、相手がビルドアップでボールを持ったときに、想像以上の(プレッシャーの)スピードを相手は感じると思います。相手のリズムを狂わせるところと、親善試合のアメリカ戦(2-0)であったように高い位置でボールを奪ってショートカウンターという形も考えられる。間違いなく、ファーストチョイスになり得る選手だと思います。得点を奪うだけではない役割になると思いますし、特に守備のタスクを担いながら、いかに高い位置でボールを保持しながら、押し込んだ形で2列目の攻撃力を生かすか。もちろんフィニッシャーとしての能力もありますが、それを求めるなら古橋(亨梧)という選択だったと思いますし、フィニッシュだけではないものを求めていることを今回の人選からは感じます。

 上田に関して言えば、前線で体を張ってボールを収めるところ、大迫が担っていたような部分を求められながらも、ゴールに向かっていくダイナミックさも求められる。大迫と天秤にかけて、コンディション面も含めて上田を選ぶ判断になったかと思います。得点を奪いたいとき、そしてリードを守り切りたいとき、いろいろな状況下で起用されると思います。

 拓磨は、怪我からどれくらいコンディションが戻ってくるのか。未知数な部分があるなかで呼ばれたというのは、期待の表れでもあると思います。同じく怪我をしている板倉(滉)と比べて、まだ欠かせない存在ではないかもしれませんが、森保監督がクラブレベルでも一緒に仕事をしてきて、いろいろな特徴をより把握しているというのもあるかなと思います」

 佐藤氏にとって、浅野はサンフレッチェ広島でともにプレーした仲間でもある。2018年のロシアW杯での悲運を経ての選出に、やはり感じるところもあるのだろうか。

「はい、もちろん。W杯出場に貢献した選手の1人でもありますが、あのタイミングで怪我をしてしまって、前回大会も同じような形でメンバーに選ばれることができなかった。今大会に懸ける思いは強かったと思います。この4年間で会っていろいろと話もしていました。クラブレベルでは思うようなキャリアを積めない時期もあったことを考えれば、仲間としては彼が代表メンバーに選ばれたことは非常に嬉しく思います。最終予選を含めていろいろな状況下で起用されて、期待に応えていったところもあるので、選ばれるだけではなくW杯で活躍する姿を見たいと感じますね」

 主に1トップ起用が予想されるFW陣。MFをはじめとするチームはどのようにサポートすべきなのか。

「2列目の選手がFWの動き出しを見て、一つのパスでゴールを奪うという形にはならないと思います。相手がボールを持っているときに前に行く、奪ってからはそのボールをいかにフィニッシュワークできる位置まで持っていくか。高さ、強さ、スピードが世界レベルで抜きん出ているわけではありませんし、例えばドイツのDFアントニオ・リュディガー(レアル・マドリード)に競り勝てるかと言ったら、簡単ではないですよね。やはり奪った直後の相手の陣形が崩れているとき、手数をかけずに攻めるということはあると思います。

 2列目にはスペースに出ていく力がある鎌田(大地)、久保(建英)、そしてボールを持ってから相手を外せる三笘(薫)、ミドルレンジからフィニッシュできる堂安(律)と、いろいろな選択肢があります。もちろん右であれば伊東純也もいい状態を保っていますし、仕掛ける、外す、中にボールを入れる、自ら入っていくというところができますね。ストライカーと言われる9番タイプの選手が点を取るような代表チームの作り方ではないと思うので、ある程度2列目が仕事をしていくことになるのかなと思います」

 日本代表は現地時間23日午後4時(日本時間午後10時)にドイツ代表との第1戦に臨み、同27日午後1時(日本時間午後7時)にコスタリカ代表、同12月1日午後10時(日本時間2日午前4時)にスペイン代表と対戦する。

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