9月シリーズで進展、カタールW杯行きの日本代表GK「序列検証」 緊急事態に備えた“サプライズ選出”も?
【識者コラム】9月シリーズで正守護神争いに進展
カタール・ワールドカップ(W杯)の日本代表メンバーは、11月1日に正式発表される。基本的には権田修一(清水エスパルス)とシュミット・ダニエル(シント=トロイデンン)による正GK争いと見られるが、やはり軽視できないのは川島永嗣(ストラスブール)の経験値だ。過去3大会でゴールマウスを守ってきた”生ける伝説”で、全ての大会においてギリギリまで競争があり、打ち勝ってきたのが川島という選手だ。
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鍵になるのはストラスブールでの状況だろう。現在、ベルギー人GKマッツ・セルツの控えで、常にベンチ入りはしていた。しかし、9月11日のリーグ・アン第7節クレルモン戦ではクラブ生え抜きの18歳ロビン・リッサーがベンチ入りした。理由は定かでないが、リーグ・アンは来シーズンから18チーム制になることを受けて、4チームがリーグ・ドゥ(2部)に降格する。
現在14位と苦しんでいるストラスブールだけに、負けが混んでくれば当然、ディフェンスの見直しというのは起こり得る。ただ、そこまでストラスブールは10得点14失点と、前線の決め手に明確な課題を抱える状況なので、川島が単純な評価でセルツからポジションを取るのは難しいかもしれない。それでも確実にコンディションを作って、代表活動につなげてくる選手なので、十分に逆転の芽がある3番手として見ておくべきだろう。
権田とシュミットの2人に関してはそれぞれ特長が違うので、甲乙付け難いものがある。前者はJリーグ、後者はベルギーリーグで、戦っているステージも異なる。結局、森保一監督や下田崇GKコーチが何を基準にファーストチョイスを判断するかで決まってくる。フィールドの選手は対戦相手や試合ごとのプランでシステムやスタメンが変わることも多くあるが、A代表の国際大会では怪我などのアクシデントがない限り、正GKは固定して戦っていくのが短期決戦の常識ではある。
権田は守備の統率力に優れており、水も漏らさない集中力や安定感がある。シュミットは正確なビルドアップに定評があり、特にゲーゲンプレスをベースとするドイツに対してはGKがうしろでボールを捌けるというのは大きな強みになる。セービング周りもシント=トロイデンで継続的にプレーするなかで徐々に良くなっているはずだ。
ただし、権田ほど頻繁に声を出すタイプではなく、それが理由かは分からないが、ちょっとした時にディフェンス間の連係ミスに絡んでしまうこともある。W杯という大舞台になることも含めて、カタールW杯はシュミットが心身ともに、日本の守護神としてたくましさを増すチャンスでもあり、クラブでも1つ上のステージに行くきっかけにもなりうる。
大雑把に言えば、権田の安定感を取るか、シュミットのさらなる伸びしろを取るかということになるかもしれない。ただ、9月のドイツ遠征で行われたエクアドル戦で、シュミットがファーストチョイスの候補に躍り出た。権田は負傷を繰り返している影響を解消できるかどうか。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。