DF問題、旗手生き残り、監督の意図 日本代表、最終選考前のメンバー発表で思わず「深読みしたくなる」3つの要素

予定調和の流れで見せた意外性

 次に、復調が究極の二者択一を生むのではないかという疑問も生まれた。

 ここに来て新たな波紋を生み出したのは、復調著しい旗手。セルティックに移籍した直後は大活躍していたものの、しばらく鳴りを潜めていた。しかしここにきて調子が上向き、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージ第2節ではあわやCL初ゴール(記録上はオウンゴール)という場面も作った。

 その旗手を使うのならどのポジションになるのか。左SBも出来るが、現在は2列目としてプレーしていて、使うならトップ下、あるいはインサイドハーフということになるだろう。

 森保監督が4-2-3-1でトップ下を置いていた時、当初の構想では南野拓実がファーストチョイスだった。だが最終予選では鎌田大地(ホーム・オマーン戦、アウェー・サウジアラビア戦)、久保建英(アウェー・中国戦)を起用している。

 ホームのオーストラリア戦以降は4-1-4-1が主流となり、インサイドハーフは田中碧と守田英正がレギュラーとなった。同システムを採用した7試合中5試合で起用されている。そして残りの2試合は柴崎岳と田中、原口元気と旗手いう組み合わせが先発だった。

 その後、6月の試合では原口と鎌田(パラグアイ戦、チュニジア戦)、原口と田中(ブラジル戦)、久保と柴崎(ガーナ戦)という組み合わせが試されている。ということは、旗手が試されたポジションは、守田がレギュラーとしてプレーしていて、鎌田が2番手ということになるだろう。

 もしもこのポジションから1人外さなければならないという状況になった時、鎌田か旗手か調子のいいほうだけがメンバー入りする、ということになるのも考えられる。この2人がどれくらい活躍できるか、10月のプレーが重要になってくる。

 最後に深読みしたくなるのは、森保監督の意図に関する疑問だ。

 これまでに森保監督は、「9月の代表活動としてはカタールW杯に向けての準備になるように活動したい。今回はある程度カタールW杯を見据えて選手の起用も考えたい」と語っていた。

 そうは言っても、今後怪我人が出ることも考えて森保監督はいろいろな選手を試すような采配を振るうだろう。ただし、それがメンバー選考前の最後の練習試合2試合という微妙な時期であることを考えると、今回の考察のようにさまざまな深読みが生まれることになる。

 これまでの森保監督が見せてきた性格を考えると、「いろいろありますけど、最後は予定調和的なところに落ち着きましたよ」というメンバー選考になるのではないかと考えてきた。だが、ここにきて代表出場経験のない瀬古をブッ込んでくるなど、なかなかな意外性も見せている。

 もしかして、いろいろ深読みした記事が出ることで対戦相手を混乱させるノイズを増やそうとしているのか、あるいはチーム活性化のためにどんどん刺激を与えようとしているのだろうか。森保監督がそう考えていたら、この記事は思惑に見事にハマってしまったことになる。そう言えば、オンライン会見の森保監督の口元には微笑みがあったけど、目は笑っていなかったような……。

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森 雅史

もり・まさふみ/佐賀県出身。週刊専門誌を皮切りにサッカーを専門分野として数多くの雑誌・書籍に携わる。ロングスパンの丁寧な取材とインタビューを得意とし、取材対象も選手やチームスタッフにとどまらず幅広くカバー。2009年に本格的に独立し、11年には朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の平壌で開催された日本代表戦を取材した。「日本蹴球合同会社」の代表を務め、「みんなのごはん」「J論プレミアム」などで連載中。

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