伊藤洋輝はシュットガルト浮沈のキーマン 監督が求める“オフェンシブなプレー”とは?

シュツットガルトDF伊藤洋輝【写真:Getty Images】
シュツットガルトDF伊藤洋輝【写真:Getty Images】

【ドイツ発コラム】伊藤が考えを巡らせるチームコンセプト「プラスα」の理論

 ドイツ1部シュツットガルトは、昨季最終節のケルン戦のアディショナルタイムにMF遠藤航がねじ込んだ決勝ゴールで見事1部残留を決めた。今季はここまで5節を終えた段階でまだ勝利はないが、負けも1回しかない。攻撃に関してはエースFWサシャ・カライジッチが移籍市場の最後でプレミアリーグのウォルバーハンプトンへ去った穴は間違いなく大きい。一方で守備に関しては悪くない。5失点はリーグ全体で4位タイの数字だ。

 1-1で終わったブンデスリーガ第5節シャルケ戦では特に試合開始から前半18分に先制点を取るまでは上手くゲームの主導権を握ることができていたし、その後もチャンスを作れていただけに、勝てる試合を落としたという見方もできる。

 左センターバック(CB)としてフル出場したDF伊藤洋輝も「勝ち切りたかったですね」と話していた。

「退場してから勝ちに行こうというのは難しいので、前半からチャンスがあったなかで、自分たちが主導権を握れているなかで点を取れるかというところだと思うので」

 とはいえ、後半22分にDFヨシ・バグノマンが2枚目のイエローカードで退場し、20分以上数的不利での戦いを余儀なくされたが、コンパクトな守備で引き分けに持ち込むことができたのはプラスに捉えることができる。

 スベン・ミスリンタートSDもその点を強調していた。そして、今シーズンここまでの試合内容を見ると、昨季と比べて確かな成長があると語る。

「試合内容的には今の勝ち点よりも3~4点多く取れていたかもしれない。しかも、5試合中2試合で数的不利で戦わざるをえなかった。昨シーズンだったら耐え切れなかったかもしれない。フィットネスの部分においても昨シーズンよりもいい。今日も数的不利でも走り切って引き分けに持ち込むことができた」

 フィットネスの部分だけではなく、戦術理解や試合の状況に応じたプレー判断の質の向上も個々の選手、そしてチームとして見られる。特に、守備ブロックは昨季から同じメンバーでプレーできているのが大きい。GKフロリアン・ミュラー、DFコンスタンティノス・マブロパノス、DFワルデマール・アントン、そして伊藤は不動の存在だ。前述したように、ここまで5失点という好数字を支えている。

「今、試合前に確認していることというのはチームとしてできていると思うので、そこにプラスα、ピッチ上で感じたものをどう表現していくかというところだと思う」

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中野吉之伴

なかの・きちのすけ/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。

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