元レフェリー家本政明氏が選出…印象に残る“鹿島の名手6人” 「心から尊敬」「まさにプロフェッショナル」と絶賛したのは?

鹿島時代の曽ケ端準、小笠原満男、興梠慎三【写真:Getty Images】
鹿島時代の曽ケ端準、小笠原満男、興梠慎三【写真:Getty Images】

【インタビュー】「ミスターアントラーズとして真っ先に浮かぶ選手は小笠原さん」

 9月3日のJ1リーグ第28節の鹿島アントラーズ対浦和レッズ戦で「家本政明ぶっちゃけLABO」というオンライン同時視聴イベントを開催する元国際審判員・プロフェッショナルレフェリーの家本政明氏。主審としてJリーグ歴代最多516試合担当という経歴を持つ家本氏が「印象に残る鹿島の名手6人」を選出し、その理由について語っている。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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■小笠原満男(MF)
鹿島在籍:1999年~2006年8月/2007年7月~2018年

 僕の中で「ミスターアントラーズ」として真っ先に浮かぶ選手は小笠原さん。これまで代表級の素晴らしい選手たちが鹿島に数多く在籍していましたし、いい選手を挙げたらキリがないですが、鹿島レジェンドとして一番に出てくるのは小笠原さんです。

 攻守の総合的な技術や戦術眼に加え、負けん気の強さも備えており、アントラーズイズムを見事に体現していました。とにかく勝利へのこだわりが凄い選手でしたね。「満男さんがそこまでやるなら俺たちもやらなきゃ」とチームメイトに思わせるような選手だったように思います。試合序盤、チーム全体に「行くぞ!」という思いを伝えるように球際でガツンとプレーしたり、ここぞという場面では意図的にレフェリーにプレッシャーをかけることもあり、「心は熱く、頭は冷静」という選手でした

 僕が大きなダメージを与えることになってしまった2008年ゼロックス(鹿島対サンフレッチェ広島)でも、彼が上手く間に入ってくれました。勝ち負けのある試合中はファイターですが、ひとたび試合を離れれば紳士そのもので、人間的にも素晴らしい方。心から尊敬している選手の1人です。

 印象に残っているのは2015年のナビスコカップ決勝、鹿島対ガンバ大阪戦。これこそ鹿島という展開で3-0と勝利したなか、試合後の表彰式が終わったあと、小笠原さんが1人でわざわざ僕のところまで来て、「今日は本当にありがとうございました!」と挨拶してくれた。優勝し、ほかの選手たちが盛り上がっているなか、少し離れていた僕のところまでわざわざ来てくれたというのは嬉しかったです。

 当時ガンバ大阪のMF遠藤保仁選手(現・ジュビロ磐田)に対して遠慮する選手もいたなかで、小笠原さんは球際でも一切遠慮せず、むしろより激しく、強くいっている感すらありました。遠藤選手もそれを分かっているから上手く流しながらプレーしたりして、あの2人の攻防は間近で見ていても楽しいものがありましたね。

 漢字で言うなら、シンプルな「男」ではなく、泥臭さなども感じさせる「漢」。華やかなプレーではないかもしれませんが、活躍する人が活躍してチームが勝てばそれでいいという職人気質でもありました。自身の役割に徹し、それでいて絶対に負けないという気概が滲み出ていた。まさにプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい選手でした。

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家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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