“ポスト大迫”問題を解消するには? 日本代表大型FWの系譜から占う“次世代の期待の星”

大迫の代わりが完璧に務まる日本人選手は今なお不在

 大迫と本質的にタイプは違うが、東京五輪の主力でもあった上田綺世(セルクル・ブルージュ)が”ポスト大迫”の筆頭格として期待を集めた。巧妙な動き出しとファーストタッチのコントロール、日本人離れしたシュート力を誇り、前線でボールを収める大迫とはまた違った存在感で、攻撃に奥行きをもたらすことができる。ただ、今夏に鹿島アントラーズから移籍したベルギー1部のセルクル・ブルージュで、一時はトップ下で使われたり、FWでもいいタイミングでパスが出てこなかったりと、苦しい時期が続いている。

 その上田が欧州移籍で参加できなかったE-1選手権で3得点を記録して、一躍カタールW杯の滑り込みに名乗りを上げたのが町野修斗(湘南ベルマーレ)だ。”領域展開”がキャッチフレーズの町野は185センチのサイズながら機動力もある。攻守に幅広く関わるが、大事な時は必ずボックス内に入り込んでおり、狭いスペースでも冷静にシュートできる。中断明けの試合で、8得点から数字を伸ばせていないが、9月の欧州遠征に向けたメンバー発表までに、二桁には乗せたいところだ。

 カタールW杯の候補という基準では欧州組を含めて限られるが、少し先を考えると”ポスト大迫”の候補は少なくない。E-1選手権に参加したパリ五輪世代の細谷真大(柏レイソル)は177センチながら的確なポストワークと縦の推進力を武器とする。同じ柏レイソルの森海渡は185センチでスピードもあり、筑波大から卒業を待たずにプロ契約した期待の大型ストライカーだ。北海道コンサドーレ札幌の中島大嘉も188センチの上背以上に跳躍力が素晴らしく、ドリブルの突破力も備える。まだ粗削りだがスケール感はライバルの追随を許さない。

 いずれにしても、大迫の代わりが完璧に務まる日本人選手はいない。オナイウや林は近いが、それでも同じ役割を求めるのは酷なので、大迫ほど獅子奮迅の働きをしなくても、ボックス内で決定的な仕事ができるような攻撃を日本代表が目指していくべきだろう。それでもカタールW杯に関しては、もし大迫が100%のコンディションを取り戻せるのであれば、招集対象から外す必要はない。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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