J1リーグ「今夏の補強診断」 “残留争い”クラブが積極強化、成果を上げた“夏のチャンピオン”は?

長谷川監督の“愛弟子”を獲得した名古屋は、残留争いの危険水域から脱出

 夏に加入して、すぐに主力として活躍している選手の代表例が、現在16位で残留争いの渦中にあるヴィッセル神戸のMF飯野七聖(←サガン鳥栖)とサンフレッチェ広島から鳥栖に加入したMF長沼洋一だ。先に飯野が神戸に移籍し、その後釜となり得る戦力を鳥栖が獲得するという流れだが、飯野は攻撃的な右サイドバックとして早くも神戸に欠かせない存在になっている。

 神戸は吉田孝行監督になって最初の4試合で3勝1分だったが、E-1選手権の中断明けから成績が下降線を辿り、苦しい状況ある。しかしながら飯野のほかにも、ブラジルのフラメンドから加入したセンターバックのDFマテウス・トゥーレル、韓国の江原FCに在籍していた元日本代表MF小林祐希、大型FWのステファン・ムゴシャがそれぞれ出番を得ており、MF橋本拳人のスペイン2部ウエスカ移籍で懸念された中盤も、出番を失っていたMF扇原貴宏を起用する形でカバーしている。

 一方で鳥栖は現在4バックにトライしており、より前目のポジションもこなせる長沼は川井健太監督の愛媛FC時代の教え子というアドバンテージもあり、“穴埋め”以上の効果をもたらしている。また中盤にはJ2で首位の横浜FCからMF手塚康平を補強しており、MF小泉慶とMF福田晃斗の負担が大きかった中盤に厚みをもたらすだけでなく、持ち前の展開力と左足の鋭い縦パスなどで、攻撃にアクセントを加える期待が大きい。

 現在10位の名古屋グランパスも長谷川健太監督の“愛弟子”である元日本代表FW永井謙佑をFC東京から補強。前線からのハイプレスと裏抜けで戦術的なキーマンとなり、直近3試合で1勝2分の勝ち点5を稼いで、残留争いの危険水域から脱出した。もちろん残留で満足して良いクラブではないが、福岡から加入のMF重廣卓也が2試合に先発起用されて、3-0と勝利した第25節の浦和レッズ戦で先制ゴール。湘南ベルマーレからMF阿部浩之と交換トレードのような形で加入したMF永木亮太も3試合に途中出場して、渋い働きを見せている。期待の新外国人FWレオナルドが残り試合で結果を残せれば、申し分ない夏の補強ということになる。

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河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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