“寄せ集め”か連係、どちらが優位? E-1選手権で垣間見た日本が世界で戦うチーム作りの“鍵”
【識者コラム】活動期間が限定された代表はクラブチーム主体なら連係でメリットがあるが…
E-1選手権の最終戦で韓国代表を3-0で破って優勝した日本代表は、ほぼ横浜F・マリノスなチームだった。韓国戦の先発6人が横浜FMの選手で占められていて、交代出場の宮市亮を含めると7人がプレーした。
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最初の香港戦も横浜FMから5人が先発、中国戦はサンフレッチェ広島から5人だった。Jリーグの選手を集め、ぶっつけ本番に近い形で臨む大会だったので、同じクラブからのセット起用は連係面で効率がいいと考えたのだろう。森保一監督は「将来的には単独クラブをベースにした編成もありかも」という趣旨のコメントもしていた。
代表チームが国内リーグの強豪クラブを中心に編成されるのは、1980年代あたりまではむしろ普通のことだった。ところが、1995年のボスマン判決を境に移籍の活発化と欧州クラブの多国籍化が起こって事情が変わっている。イングランド、スペイン、ドイツ、イタリアの強豪クラブは主要ポジションを外国籍選手が占めるようになり、逆に中堅国の代表クラスは外国のクラブに移籍してしまって国内のクラブにはいなくなってしまった。
2010年ワールドカップで優勝したスペイン代表、14年のドイツ代表はその点で例外と言っていい。スペインはFCバルセロナが中心、ドイツはバイエルン・ミュンヘンだった。スペインはメッシのいないバルサ、ドイツもアリエン・ロッベン、フランク・リベリーのいないバイエルンなので飛車角落ちではあったわけだが、連係面でスムーズという利点を生かしていた。
代表チームの活動期間は非常に限定されている。まとまって長期のトレーニングを行う機会はなくなっていて、招集してすぐ試合、終わったら即解散を繰り返すだけだ。毎日トレーニングしているクラブチームを母体にできるなら、連係面でメリットがあるのは間違いない。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。