吉田麻也の判断ミスはなぜ起こった? 日本代表OBが指摘する失点シーンの“問題点”

日本代表DF吉田麻也【写真:高橋 学】
日本代表DF吉田麻也【写真:高橋 学】

【専門家の目|栗原勇蔵】1失点目は伊藤が入れ替わられたことが吉田の冷静な判断を奪った

 森保一監督率いる日本代表は、6月14日に行われたキリンカップ決勝でチュニジア(FIFAランキング35位)に0-3と完敗を喫した。キャプテンのDF吉田麻也(サンプドリア)が3失点に絡む形になり、元日本代表DF栗原勇蔵氏は、問題点を指摘している。(取材・構成=FOOTBALL ZONE編集部)

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 4-3-3システムを継続採用した日本は、中盤の底にMF遠藤航(シュツットガルト)、インサイドハーフにMF原口元気(ウニオン・ベルリン)とMF鎌田大地(フランクフルト)が並び、前線は右にFW伊東純也(ヘンク)、左にFW南野拓実(リバプール)、中央にFW浅野拓磨(ボーフム)が起用された。

 前半は一進一退の攻防を繰り広げたなか、後半10分にスコアが動く。左サイドからゴール前にスルーパスを出され、吉田が相手をエリア内で倒して与えたPKから先制ゴールを献上。さらに後半31分、ロングボールから吉田が入れ替わられる守備陣の連係ミスで2失点目を与え、後半アディショナルタイムには強烈なミドルシュートを突き刺されて0-3と敗れた。

 6月シリーズでパラグアイ(4-1)、ブラジル(0-1)、ガーナ(4-1)と対戦してきた森保ジャパン。栗原氏はチュニジア戦に漂っていた“なんとなくの雰囲気”を指摘した。

「ワールドカップ(W杯)に向けての本気度は、これがベストだったのか。チュニジアはインテンシティー高く来ていて、寄せも早かったのに対し、日本はなんとなく試合に入って、なんとなく戦ってしまった。雨の影響もあったかもしれないですけど、前半35分に鎌田(大地)のシュートが入っていれば展開的にも変わっていたはずだし、決めないとこういう恐ろしい結果になると証明された試合だと思います」

 吉田に対しては、SNS上で厳しい声も上がっているが、栗原氏は左サイドバックのDF伊藤洋輝(シュツットガルト)の抜かれ方が、吉田にとっては後手に回る原因になったと語る。

「1失点目は、伊藤洋輝が競り負けた相手にスピーディーに持ってこられた。吉田としては自分の裏に出されて、板倉(滉)のポジショニングも分からないから、あそこで触らないと1対1になる、やられるんじゃないかという考えが頭にあったはず。ディフェンスの意識としては足を出したい気持ちも分かります。板倉、シュミット(・ダニエル)の声がどうだったか、コンビネーションの問題もありますけど、吉田の経験からしたら“らしくない”。止めに行かなくても、カバーにきていた板倉で時間をかけさせて、2対1で奪いに行けばなんてことはなかったはず。あの局面までの過程は難しいとはいえ、判断を間違ってしまったと思います。スピードがある選手はそこで触らなくてもチャレンジできる。吉田の唯一とも言えるウィークポイントで、あそこで触らないともう追いつけない」

栗原勇蔵

くりはら・ゆうぞう/1983年生まれ、神奈川県出身。横浜F・マリノスの下部組織で育ち、2002年にトップ昇格。元日本代表DF松田直樹、同DF中澤佑二の下でセンターバックとしての能力を磨くと、プロ5年目の06年から出場機会を増やし最終ラインに欠かせない選手へと成長した。日本代表としても活躍し、20試合3得点を記録。横浜FM一筋で18シーズンを過ごし、19年限りで現役を引退した。現在は横浜FMの「クラブシップ・キャプテン」として活動している。

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