ブラジル戦の“PKジャッジ”「議論の余地がある」 元主審・家本政明氏が異論「100%ファウルだとは言い難い」

ネイマールがPKでゴールを決める瞬間【写真:ロイター】
ネイマールがPKでゴールを決める瞬間【写真:ロイター】

【専門家の目|家本政明】日本対ブラジル戦のPK判定シーンへ見解

 日本代表は6月6日、キリンチャレンジカップでブラジル代表と対戦し、0-1で敗れた。後半32分にFWネイマールのPK弾が決勝ゴールとなったなか、ブラジルのPK獲得につながった日本のファウル判定が議論になっている。ペナルティーエリア内での競り合いで反則を取られた日本側へのジャッジは妥当だったのか。2021年シーズン限りでサッカー国内トップリーグの担当審判員を勇退した家本政明氏は、「100パーセントファウルだとは言い難い」と分析している。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

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 日本はブラジルの猛攻を終始耐え続け、シュート数は22本対5本、枠内シュートは5本対0本と劣勢に。そのなかで、後半32分に与えたPKをネイマールに決められて敗れた。このPKとジャッジされたシーンを巡り、レフェリーが下した判断の是非が問われている。

 この場面では、ネイマールのシュートをGK権田修一が弾いたこぼれ球に対し、MF遠藤航がいち早く反応。それに対してFWリシャルリソンもアプローチすると、振り抜いた左足が遠藤の右足付近にヒットしその勢いで転倒した。

 主審は遠藤の反則としたがスロー映像を見る限り、遠藤はあくまでボールをキープするために自らの身体を内側へ入れているだけのように見える。ファウル判定は果たして妥当だったのか、家本氏はまず、この試合を裁いたイラン人のアリレザ・ファガニ主審の立場から、この判定に至った経緯をこう分析する。

「レフェリーの見ているアングルから判断すると、ルーズボールに対して、ブラジルの選手のほうに優位性があったと見たんでしょうね。遠藤選手がどう対応していたかを注視してなかったと思うんです。その結果、シュートに対して優位にあったブラジルの選手に対して、遠藤選手が右足を当てに行ったように見えてPKと判断したと推測します」

 主審がホイッスルを鳴らすまで間が空いたことに関しては、「その後のギリェルメ・アラーナ選手のシュートがバーに当たるんですけど、そこまで見ていた」と言及。ブラジル側へのアドバンテージを見越したうえでの判断だったとし、PKジャッジに対しては自信があったと推測する。もっともPK判定に関しては、家本氏は異論を唱える。

「遠藤選手の動きを見る限り、自分の身体をボールをキープするためにブラジルの選手との間に入れるだけなんです。遠藤選手の右足は自分の身体を移動させるために動かしただけで、相手に向けられたものではないですし、相手のシュートに対する動きではないんですよね。ほかの部分でも、ファウルに値するようなアクションは見受けられない。これは事実です。なぜこれがPKになったのかは、十分に議論の余地がある。個人的には100パーセントファウルとは言い難く、通常のフットボールコンタクトの類だと考えます」

家本政明

いえもと・まさあき/1973年生まれ、広島県出身。同志社大学卒業後の96年にJリーグの京都パープルサンガ(現京都)に入社し、運営業務にも携わり、1級審判員を取得。2002年からJ2、04年からJ1で主審を務め、05年から日本サッカー協会のスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)となった。10年に日本人初の英国ウェンブリー・スタジアムで試合を担当。J1通算338試合、J2通算176試合、J3通算2試合、リーグカップ通算62試合を担当。主審として国際試合100試合以上、Jリーグは歴代最多の516試合を担当。21年12月4日に行われたJ1第38節の横浜FM対川崎戦で勇退し、現在サッカーの魅力向上のため幅広く活動を行っている。

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