プロへ“最短”と“大学経由”…薄まってきた東京Vの特異性 選手の技術レベルに大きな違いはない

東京Vが若年層から技術の高い選手の育成でリードしているのは事実だが…

 こうして両チームのスタメン平均年齢が接近していたことを考えても、育成段階での東京Vの特異性は薄まっているのかもしれない。

 依然として東京Vが、若年層から技術の高い選手の育成でリードしているのは事実だ。だがプロへの最短距離を進んで来た東京Vと、やや遠回りをして大学経由でプロへ進んだ選手たちの技術レベルに大きな違いはなく、それは東京V側に目を転じても、クラブとは無縁で育ってきた新井瑞希らが先頭を切ってヴェルディ色を発信していることも証になっている。

 東京Vはアマチュアの読売クラブ時代から、特に育成面では異彩を放ってきた。しかし半世紀を経て、ようやくどんな環境でもヴェルディに肉薄する技術を身に付けられる時代が到来した。逆にヴェルディは、実に半世紀ぶりに再度差をつけるための課題に直面しているのかもしれない。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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