急変貌のFC東京、開幕戦で鮮烈な“予告編”披露 出遅れと混乱必至の想定をはるかに上回る機能ぶり

「宝の持ち腐れ」の感が強かった紺野和也もピッチに

 FC東京は現在6人の選手がコロナ陽性で使えない状態だというから、まだ新監督の構想の全貌は見えてこない。ただおそらく多くの選手たちが、新体制による改革を好意的に受け止め積極的に取り組んでおり、一方でアルベル監督もコンセプトを吹き込んだうえで、個々の適所を見極めた起用をしている。

 最終ラインは左サイドにレフティーの小川諒也を配すことをベースに、長友佑都は右で渡邊と競わせている。インサイドハーフには強度と運動量を持つ松木と安部柊斗を並べてMFを活性化し、永井謙佑はワイドで走らせた。さらには故障もあったが「宝の持ち腐れ」の感が強かった紺野和也もピッチに立たせて、終盤の短時間ながら見せ場を作らせている。

 コンセプトの大転換は、出遅れ必至と見ていた。ところがフタを開けて見れば想定をはるかに上回る機能ぶりで、改めて個々のポテンシャルと総合力の高さを立証した。今シーズンのキャスティングボートは、FC東京が握ることになるのかもしれない。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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