【J1全クラブ最新布陣】長谷川新体制の名古屋、チーム力向上の可能性も “精鋭補強”の磐田はタレントの出来に注目

J1復帰の磐田は3-4-2-1をベースにしながら、可変性の高いスタイルを標榜

■ジュビロ磐田/昨季成績
J2リーグ:1位(勝ち点91/27勝10分5敗)
天皇杯:ベスト8

【今オフ補強動向】
 J1昇格を果たした中心メンバーを残しながら“残留以上”の結果を残すための精鋭を補強した。目玉はFW杉本健勇(←浦和レッズ)だ。昨年は夏以降、横浜F・マリノスの最前線で存在感を示した。しかし、3得点という結果には本人も満足しておらず、大目標である日本代表復帰に向けて“ラストチャンス”にかける覚悟で臨む。

 さらに高さと速さを備えるFWジャーメイン良(←横浜FC)に機動力の高いMF黒川淳史(←大宮アルディージャ)、高校サッカー選手権で注目を集めたMF古川陽介(←静岡学園高)と個性的な攻撃のタレントが加入した。

 昨シーズンと同じ3-4-2-1をベースにしながら、可変性の高いスタイルを掲げる伊藤彰監督は「シャドーの競争が激しい」と嬉しい悩みを明かす。ボランチにはベガルタ仙台でほぼフルシーズン主力をつとめたMF上原力也が復帰。持ち前の展開力と正確なキックにプレーの持続力が加わった。セットプレーのキッカーとしても優秀で、MF遠藤保仁と役割は重なるが、過密日程を考えても頼もしい存在になる。

 また昨年の天皇杯で活躍したアカデミー育ちのMF藤原健介が、シーズン中にどこまでリーグ戦に絡めるかは注目。ボランチにはブラジル人MFドゥドゥ(←ヴィラ・ノヴァ)を補強したが、合流はやや先になりそう。東京五輪の金メダリストであるDFリカルド・グラッサ(←バスコ・ダ・ガマ)も合流できていないなかで、同じ左利きのDF袴田裕太郎(←横浜FC)がアピール中。実力者揃いのGK陣には梶川裕嗣(←横浜FM)が加わり、正確なフィードを武器に守護神の座を狙う。

■主な獲得選手
【Pos./選手名/前所属】
FW 杉本健勇 浦和レッズ※レンタル
FW ジャーメイン良 横浜FC
MF 黒川淳史 大宮アルディージャ
MF 古川陽介 静岡学園高
DF 袴田裕太郎 横浜FC

■主な放出選手
【Pos./選手名/移籍先】
FW ルキアン アビスパ福岡
FW 小川航基 横浜FC
MF 藤川虎太朗 ギラヴァンツ北九州
MF 今野泰幸 南葛SC
GK 杉本大地 ベガルタ仙台

【22年シーズン陣容の注目ポイント】
 鈴木政一前監督の下、自由度の高いサッカーでJ2優勝を果たした昨シーズンからの変化は伊藤彰監督に代わり、チーム全体から選手たちの立ち位置を設計していく形になったこと。ただし、伊藤監督はすべてを変えるつもりはない。

 昨季のベースを残すなかで、3-4-2-1システムを軸に流れのなかでポジションを変えて行く。そのため、ボランチでもアウトサイド、ウイングバックはサイドバック、3バックもスライドした位置でのビルドアップやディフェンスなど、選手には幅広いプレーが求められる。

 伊藤監督は選手の個性は重視するが、戦術的な役割をこなすことが前提で、そこにスペシャリティーを乗せて欲しいと要求する。前体制から引き続き、遠藤、MF山本康裕はともに中心的な存在だが、消耗の激しいポジションで上原、MF鹿沼直生、藤原、左利きのMF清田奈央弥の突き上げは必要なポイントだ。

 戦術的な生命線である3バックのリベロはベテランのDF大井健太郎がファーストチョイスだが、ビルドアップ時にリベロが中盤に出る形にもトライしており、鹿沼や山本が担うケースもある。

河治良幸

かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。

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